第3回テーマ : 「暴言・暴力」にどう対応するか?
参加者:
【介護職】庄司俊彦1) 高橋芳雄1) 土田友美2) 徳市恵美3) 德長英人2) 長岡敬一郎3) 原島哲志1)
三富晴美4) 渡辺育美5)
【介護支援専門員】五十嵐千恵子6) 石附克也7) 石丸祐子8) 小林知美9)関崎敦子9) 横山省子6)
渡辺美佳子1)
【訪問介護員】稲田真澄10) 小林英子10)
【作業療法士】川瀬敦士1) 皆川尚久1
【医師】川瀬康裕1) 川瀬裕士1)
【看護師】坂井美和子1)
【生活相談員】武石奈保子11)
【施設長】木村善行11)
【計画作成担当者】土田和樹2)
【認知症地域支援推進員】川瀬弓子1)
介護職・訪問介護員・生活相談員・施設長・計画作成担当者・・・以下「介」
介護支援専門員・・・以下「CM」
作業療法士・・・以下「リハ」
看護師・・・以下「看」
認知症地域支援専門員・・・以下「地域」
1)川瀬神経内科クリニック、デイケア、ショートステイ、サービス付き高齢者向け住宅(以下「川瀬」)
2)はあとふるあたごグループホーム三条(以下「GH–A」)
3)あさひケアセンター月の郷(以下「ショート」)
4)愛の家グループホーム三条上須頃(以下「GH–B」)
5)特別養護老人ホームおおじまの里(以下「特養A」)
6)ケアセンターソレイユあざぶ(以下「居宅A」)
7)ケアプランセンターさんじょう社協(以下「居宅B」)
8)居宅介護支援事業所 長和園(以下「居宅C」)
9)さわやか苑 三条東 居宅介護支援事業部(以下「居宅D」)
10)有限会社 サンケアー(以下「訪介」)
11)特別養護老人ホーム 長和園(以下「特養B」)
氏 名(所属,職種)
川瀬敦士(川瀬,リハ) 只今より認知症ケアをみんなで考える会第3回「認魂」(川瀬神経内科クリニック認知症疾患医療センター診療所型認知症研修会)を開催致します。私は川瀬神経内科クリニックで作業療法士をしています川瀬敦士です。よろしくお願い致します。あまり堅苦しくならずに、気を楽にして活発に意見を言い合える会にしていきたいと思います。はじめに川瀬神経内科クリニック副院長の川瀬裕士より挨拶があります。
川瀬神経内科クリニック 作業療法士 川瀬敦士 氏
川瀬裕士(川瀬,医師) 今日は皆様お集まりいただきありがとうございます。今日のテーマは暴言・暴力ということで一番究極のテーマを3回目にしてみました。かなり深いところまで話そうと思えば話せるテーマかなと思います。皆様から事前にいくつかの事例を頂いていますので、それらを中心にして進め、あとは我々の方で経験した例をいくつか紹介していきます。
川瀬神経内科クリニック 医師 川瀬裕士 氏
川瀬敦士 まずは暴言暴力の現状を確認し、それに対応することの意義を確認したいと思います。そしてまた対策を講じるにあたっては、やはり本人の気持ちや介護スタッフの気持ちについて考えることが大切だと思います。その後に事例を見て話し合っていきたいと思います。それでは暴言暴力について、まずは現状の確認をしましょう。認知症の診断を受けた一部の方が介護者や他の高齢者に対して暴言や暴力行為を行うことがある。対策を立てる意義としてご本人や周囲の方への負傷リスクをなくす、周囲の人の心理的負担を減らす、本人に心の安らぎを与える、穏やかで和やかな場の雰囲気を作る、コミュニティ内の関係性を改善させる、介護やリハビリの進行の妨げにならない等があるかと思います。本人の声や気持ち、介護者の声・気持ちとしてはこのようなことが想像されるかと思います(図1、図2)
図1 : 本人の声・気持ち
指摘されたことに対しバカにされた。 恥ずかしいから(それを)したくない。 嫌な事を(何かを)無理矢理させられた。 理由は分からないが、イライラしている。 (背景には困った、痛い、眠いなどあるかも) 断りもなく何かされた。(忘れてしまい) 知らない人が勝手に自分の部屋にいる。 こいつには強く言わないとダメだ。(正義感から) |
図2 : 介護者の声・気持ち
言葉がきつい、手をあげないでほしい、怖い。 なぜ暴れるのか? 言う事を聞いてほしい。 職員としては他の人を守らなければならない。 貴方だけに時間をさけない。 こちらも感情的になってしまう。 工夫はしているが、止められない。 対応に困っている。 |
ではここから具体的な例を見ながら進めていきます。質問や意見等があればどんどん発言して頂ければと思います。まず初めにデイケア樫の森の一例ですが、入浴の場面です。女性です。「何しやがんだいや!(何をするんだ!)」と言い、手を振り払う、手と足が出る、洗面器を投げつける、引っ掻く、特に洗髪を強く嫌がるということがあったようですが、シャワーではなく手桶でお湯をかけ、タオルで額をおさえて顔になるべくお湯がかからないようにしたら怒らなかったようです。怒りが出る前に対策を講じてうまくいった一例です。
暴言暴力ケース1 重度認知症、会話がほとんどできない
川瀬敦士(川瀬,リハ) もう一つの例について原島さんお願いします。
原島哲志(川瀬,介) この方はサービス付き高齢者住宅(川瀬)の入居者で、入居時から重度の認知症でコミュニケーションも取れない方でした。初めの頃はまだニコニコしていましたが、だんだん認知症が重度になるにつれて、介護拒否が強く現れた方です。失禁して着替えをする時や、入浴をする時などに大声で叫ぶ、暴れる、叩くといった行為が頻回にありました。スタッフ2人がかりで対応していました。
川瀬神経内科クリニック 介護職 原島哲志 氏
川瀬敦士 まず、一つ目の事例は、直接顔にお湯がかからないように対応してうまくいった一例でした。もう一つの例について、もう少し情報を補いながら皆さんと話し合ってみましょう。この方は何歳くらいの方ですか?
原島哲志 その当時で74歳くらいです。
川瀬敦士 診断名は?
原島哲志 アルツハイマー型認知症とうつ病です。MMSE*1は入居時で2点です。その後は不可です。60代のころからデイケア(川瀬)に通所していた方です。
関崎敦子(居宅D,CM) 身体的にはどんな感じですか?たとえば麻痺があるとか。
*1 MMSE: 認知機能テスト。30点満点で点数が低いほど認知症が重度。
さわやか苑三条東 居宅介護支援事業部 ケアマネージャー 関崎敦子 氏
原島哲志 特に何もありません。身体的には非常に元気です。高齢者住宅より2回くらい出奔されています。
小林英子(訪介,介) (失禁により衣服が汚れた時に)「お風呂に入りますよ」と声掛けをすると着替えをスムーズするとかそういうことはないですか?
原島哲志 ないです。入浴も大変でした。
小林英子 私の訪問している方で、朝にデイサービスに行く前のオムツ交換を依頼されていました。自宅では「何すんだんや!」といわれて脱がすことが出来ませんでした。しかし、その方がデイサービスで入浴時に、「お風呂に入りましょう」と言うと素直に脱いでくれたことがあったので、(この方も)どうかな?と思いました。
五十嵐千恵子(居宅A,CM) だんだんダメになってきたと言う事ですが、何か区切りがありますか?ダメになってきたのはいつ頃ですか? この方はお風呂に入ることの意味が分かっていない。お風呂場が怖いのか?それともお風呂が怖いのか?
ケアセンターソレイユあざぶ ケアマネージャー 五十嵐千恵子 氏
原島哲志(川瀬,介) そういうレベルではなかったです。もともとコミュニケーションがほとんど取れない方で、おとなしい方でした。かわいいものをコレクションするのが好きな方で、小さい人形やこけしが自分のお部屋にたくさん並べてあり、それを整理するのが日課でした。だんだん整理をしなくなり、置き方がおかしくなってきた頃からこのような症状が出始めてきました。何がきっかけでこのような状態になったかはこちらでは把握していません。
川瀬裕士(川瀬,医師) この方は、認知機能がどんどん低下していって、最後の方はかなり進んだ(認知症の)状態となっていてほとんどの事が何も理解できないレベルになっていました。言葉でのコミュニケーションはほとんど不可能で、ゼロ歳児が泣いているのをどうやったら泣かないように出来るか?というような程度といえばいいでしょうか。認知症の程度としてはかなり重度で少し特殊な例ですが、暴言暴力で困った一例として紹介してもらいました。
川瀬康裕(川瀬,医師) 言葉は「はい」、「いいえ」もほとんどないですか?
原島哲志 ないです。
川瀬康裕 施設の方はこのような方の対応の経験があるのではないでしょうか?ほとんど言葉はなく、だけど体は動く方。
川瀬神経内科クリニック 医師 川瀬康裕 氏
原島哲志 椅子に座っているということもできず、ほとんど床に座って何かを探しているような状態でした。夜間お部屋で静かだなあと見に行くと、クローゼットの中に入っていたりしていた。狭いところが落ち着くみたいでした。
川瀬敦士(川瀬,リハ) なかなか難しい例があるのというのが現状のようですね。それでは皆さんから事前に教えていただいたケースについて見ていって、みんなで対策案を考えていきたいと思います。
暴言暴力ケース2 マンツーマンで対応しないと怒る
川瀬敦士 特別養護老人ホーム(特養A)の事例です。説明をお願い致します。
渡辺育美(特養A,介) 私は1年間くらい一緒に過ごしている方ですが、居室から出て来た時に、スタッフが他の方に関わっていると段々表情が険しくなって、昼食後の内服薬を持っていくと、向精神薬や安定剤も処方されている方ですが、「いらない、うるせぇ、殺せ」などと怒鳴ることがあります。時間をおいて(薬を)勧めてみても飲んでくれないので、居室に「一度戻りましょう」と言って、やっとのことで戻っていただいて。でも居室に帰るとすぐ笑顔になって、30分位すると、「まだ飲んでいなかったね。飲みます。」と言って飲んでくれます。本当にひどい時は、玄関まで走って行って、何回も開けようとしているんですが、(ドアは)開かないので落ち着くまで職員が対応をしています。居室で過ごしている時もコールがあって、「今日はいつ帰れますか?」、「俺の車はどこだ?お金はどこにあるんだ?」と何度も同じ質問をしてくるので今対応に困っているところです。一応精神科にも受診していてそのことは話してはいるんですが、受診の時は先生と楽しく会話されているようです。
介護職 渡辺育美 氏
小林英子(訪介,介) 単純にお部屋にいてもらうのはだめですか?
渡辺育美 それも考えましたが、その方が出てきたいと思って出てきているのでそれを拒めないので。最初は全然笑顔ですが、30分くらいそこにいると(機嫌が悪くなる)。
小林英子 自分でお部屋から出てきているんだけど、スタッフに構ってもらえないと段々機嫌が悪くなる。受診の時は先生がマンツーマンで対応してくれているので笑顔になるのですね。
渡辺育美(特養A,介) 一対一で対応すると笑顔になります。
小林英子(訪介,介) そんなにマンツーマンで対応できないので難しいですね。代わる代わる職員さんが気にかけて、声かけしてはどうでしょうか?
渡辺育美 あまり声かけ過ぎると「おまえがうるさいから薬を飲まないんだ」と今日は言われたようです。今日も玄関で騒いでいたようです。また女性職員さんはもうダメなので、男性職員さんからの声掛けの方が比較的大丈夫です。
小林英子 ちなみに女性の方で女性職員はだめで、男性職員ならニコニコする方もいます。
川瀬敦士(川瀬,リハ) 他の方も何かありますか?土田さんいかがですか?
土田友美(GH-A,介) 「家に帰りたい」と言っている時に、職員の声かけは本人の思いに沿った声かけをされていますか?
はあとふるあたごグループホーム三条 介護職 土田友美 氏
渡辺育美 「帰れません」とは言えないので・・。「先生に確認してまたお伝えします」と言っています。先生という言葉を出すと、多少は落ち着くのですけど。あんまり話しかけ過ぎるとヒートアップして、この前、興奮して床に寝てしまった時は少し離れて見守っていました。
川瀬敦士 (別の方ですが)コーヒーなど個人個人に好きなものを出したら良かったという例はあったようですね。
高橋芳雄(川瀬,介) 前頭側頭型認知症で反社会的な行動をとったりする方です。本人は喜んで「いいことをしている」と思って行動されていますので。でもダメダメと言うとかえって荒れたりしますので、ご本人がすごく気分よくされていれば特別扱いもいいと思うんですよね。実はそういう方は、上手に場を取り持ってくれたりすることもありますし。上手にプライド等を刺激しながら、そのさじ加減をスタッフが見極められればむしろプラスに働くと思います。
川瀬裕士(川瀬,医師) でも一対一の特別扱いは、その人にばかり時間を割くことが出来ないということはありませんか?
川瀬神経内科クリニック 介護職 高橋芳雄 氏
高橋芳雄 この方はある程度分かってくれる方なので、「あなただけですよ!」とプライドを刺激することで、ずっとマンツーマンでなければならないということではないと思います。その人のポイントをご家族、生活歴等から調べることによってまた見えてくることがあると思います。
川瀬敦士 一人でいても集中して出来ることとかが何かあれば良いですしね。アイコンタクトでも関係が出来ていれば、ちょっと離れていても会釈するとかで安心感を得てもらえることもあるかと思います。どういう思いでイライラしてくるのか?構ってもらいたいのか? その辺りをもう少し聞き取りたいですね。
稲田真澄(訪介,介) 特別扱いについてですが、この方にはとても良いと思いますが、周りの利用者さんがその特別扱いを見てどう思われるか、悪影響がないのか・・。まあそれを上手にやればいいんでしょうけど、その辺はいかがでしょうか?
高橋芳雄(川瀬,介) その人にとっては100%の対応かもしれませんが、周りの方には不快感があるかもしれません。1人のスタッフが1人で対応するのではなく、数人のスタッフで周りの方へもフォローする(もちあげる)ことが重要だと思います。例えば私が一人の方を持ち上げて特別な対応をして、誘導して少し場所を変えて落ち着いてもらう、それと同時に、その場にいた別のスタッフが、「あの方はなかなか大変な方だから、皆さんには大人の対応をしていただいて本当にありがとうございます」という風に、残って我慢してくれた人達もフォローするということが大事かと思います。さらに私たちは、役割を決めた3人一組の連携プレーをすることがあります。一人の認知症の方が激怒しており、それをなだめようとスタッフ①が説得に当たっているけれど、二人ともやや興奮状態となっている、そこへ別のスタッフ②が(初めに対応していたスタッフ①にサインを出してから)介入し、怒っている方に、「どうされましたか?何かお困りのようですね。こちらの職員が大変失礼をしました。〇〇様のおっしゃる通りです。誠にすみませんでした。後で私からよく言っておきます。あちらの部屋で詳しくお話をお聞かせください」と言って別室へ移動させる、その後別のスタッフ③がその場にいた他の利用者に対して、我慢して大人の対応をしてくれたことへの感謝を伝える、という方法です。
川瀬敦士(川瀬,リハ) そのような対応を取ることについてはスタッフから不満はでませんか?
高橋芳雄 前もってスタッフには利用者さん全員を見て対応をしなければならないこと、こういう方にはこういう対応をしようとスタッフ間で意思の疎通を図り、周知徹底を行っています。それをやった上でこのような対応をする必要があります。
川瀬敦士 利用者さんもちゃんと説明があれば仕方ないなと思ってくれる場合もありますよね。また、こういうやり方はどうかな?という意見もきっとあるかと思います。
暴言暴力ケース3 不機嫌の原因は?
川瀬敦士 次の事例に移ります。グループホーム(GH–A)さんお願い致します。
土田和樹(GH-A,介) 79歳、女性、アルツハイマー型認知症、肝硬変、肝がんの疑いがある方で、感情のコントロールが出来ずに、思った事をすぐに口に出され、他の利用者さんとトラブルになる。「バカ」、「何なのよ!」、「汚い!」と発言される方で、そういった経過があって他の利用者さんから敬遠されていて、スタッフがどう対応すれば良いのかアドバイスをいただければと思います。
川瀬敦士 ありがとうございます。この方は結構動ける方ですか?
土田和樹 体は動けますが、内臓疾患のせいか、難儀そうにされている時間があります。
川瀬敦士 感情のコントロールが出来ないというのは、怒るということでしょうか?
はあとふるあたごグループホーム三条 計画作成担当者 土田和樹 氏
土田和樹 怒ったり、自分の思うままに行動されたりします。
土田友美(GH-A,介) フロアを行ったり来たりしていて、落ち着かないです。
五十嵐千恵子(居宅A,CM) 暴言だけでなく落ち着かない状態もあると言う事ですね。その原因はなんでしょうか?
土田友美 外に出て行こうとする時もあって、(尋ねても)その理由はわからないです。
土田和樹 その時々によって違うと思いますが、天気が良くて外の空気を吸いたいなと思って行かれている時もあると思います。その時はスタッフが一緒に行くことでおさまることもあります。
石附克也(居宅B,CM) 資料によると、他者の杖の音や、咳、扉を閉める音などに反応するのですか?
土田友美 杖を突いて歩行運動をされる方がいますが、その方に向かって(怒って)タオルを投げたこともありました。
石附克也(居宅B,CM) 話し声に対してうるさいと思っているのでしょうか?
ケアプランセンターさんじょう社協 ケアマネージャー 石附克也 氏
土田友美(GH-A,介) 理解力は低下されているので、他の人が話している事は理解できないと思います。
石附克也 それでは声そのものが全部気になって、「うるさい」と言われている訳ですね。
川瀬敦士(川瀬,リハ) 話し声もうるさいとなると、静かな空間を好まれる方であれば、そういった環境を作る予防策が必要でしょうかね。
土田友美 自分のお部屋はあるけど、じっとしていられず荷造りして外に出て行こうとします。
五十嵐千恵子(居宅A,CM) その人にとっては音が気になるので、その音を物理的に何とかする方法を考えてあげた方が良いと思います。
土田友美 そうすると(施設全体が)その人中心の生活になってしまいますが・・。
五十嵐千恵子 団体行動の中のその部分だけ、ちょっとだけその人中心に考えたら、そのまま落ち着くかもしれません。
石附克也 荷造りをしていること自体は、そのままにさせておけば良いことで。それで落ち着いているのであれば、その時間を長くするとかはどうしょうか。
小林英子(訪介,介) その方の趣味とか、集中できる事をさせてあげてはどうでしょうか。
土田友美 好きな事とか楽しめる事を探っているのですが、職員もその方について行くことに一杯一杯で、余裕がない状態です。他の利用者さんも不穏になっています。
石附克也 肝硬変とか肝癌で痛みとかあるのでしょうか?
土田友美 先日、受診させて頂き、先生から認知症に対する薬を一旦中止にして、痛み止めを処方されて使ってみたところ、すごく落ち着きました。痛みを訴えられた時は、痛み止め飲んでもらっています。今までとは全然違います。
石附克也 痛みがストレスになっていたのですね。
川瀬敦士 服薬調整で症状が改善したケースですね。
川瀬裕士(川瀬,医師) 私が先日外来で診させていただいた方ですね。抗認知症薬を中止して、その後の様子を見てもらうということでお願いした方でしたね。認知症に対する薬は、時々、興奮性をかえって強くしてしまい、マイナス面だけが強く出ている方がいます。何かの音が気になってイライラするということは皆さんも経験はあると思いますが、この方はそれが人一倍強いというか、反応が過剰になってしまっていたと考えます。普通の人ならそこまで怒らないような事でもその方は怒ってしまう。抗認知症薬の作用を考えて、この方は一旦抗認知症薬を止めてみてはどうかと提案させていただきました。それでだめだったら別の薬などを考えてみましょうと。そしたら1週間くらいでだいぶ良くなったようです。
川瀬敦士 服薬調整で良くなった別のケースもありました。渡辺さんお願いします。
渡辺美佳子(川瀬,CM) もともとの性格は非常におとなしい女性の方で、夫や親族の方に対して暴言・暴力が診られました。またサービス利用中にも見られましたが、服薬調整と家族・職員の対応の工夫で現在は穏やかになっています。
川瀬神経内科クリニック ケアマネージャー 渡辺美佳子 氏
川瀬裕士 (この方は)薬を足したのでしょうか、減らしたのでしょうか?
渡辺美佳子 薬を追加しました。
川瀬敦士 この方も痛みとか何かあったのですか?
渡辺美佳子 痛みはなかったと思います。認知症の進行だと思います。この方も音に対して非常に強い反応がありました。
川瀬敦士(川瀬,リハ) 追加した薬はどういうお薬ですか?
川瀬裕士(川瀬,医師) 興奮、幻覚、妄想をおさえる非定型抗精神病薬というもので、興奮が強い人などに使います。
川瀬敦士 やはり医療機関に相談することは大切なことですね。
暴言暴力ケース4 時には正面から向き合う〜やっぱり難しい・・
川瀬敦士 それでは次の事例に移ります。ショートステイ(ショート)さんお願いします。
徳市恵美(ショート,介) 当施設はショートステイとデイサービスが併設されているのですが、帰宅欲求のある方が何名かいます。作業の提供を行ったり、外に出たいという方には気分転換に散歩やドライブに行ったり、また声かけで落ち着かれる方には声かけをして対応しています。今回のケースは、自動ドアの前に居座ってしまい、自動ドアをドンドン叩いたり蹴ったりしており、周囲の利用者が怖がっているという方です。他の利用者や職員に対してつかみかかる、叩く、つねる、蹴る等があります。立位が安定されている方であれば、ちょっと離れて見守りができますが、立位が不安定で転倒のリスクがある方なので近くにいて落ち着くように声かけをしています。しかし声かけをすればするほどどんどん興奮され、また他の利用者へも暴力があるのでその場から離しています。職員の人数にも限りがあり、その人だけに付いてはいられない場合もあって、その時は事務所のスタッフに対応してもらうこともあります。日中はまだ対応可能ですが、夜勤帯は職員が2人なので、対応に困難なことがあります。不穏時に薬を服用してもらっても効かないので、その時は他の方に害があったりするといけないので、ご家族様に連絡をして退所して頂くこともありました。なるべく宿泊して頂きたいので、対処法のアドバイスを頂きたいと思います。
川瀬裕士 このパターンは今までとは違って、実際に暴れが始まっている、手が出始めているというケースですね。このような興奮状態になった人がいた時にどう現場で対応するか?というのも今日話し合ってみたいと思います。事前の対応はしたけれども結果としてこのような興奮状態になっている、その時の対応の方法等を皆さんの経験からご意見を頂きたいと思います。
あさひケアセンター月の郷 介護職 徳市恵美 氏
土田和樹(GH-A,介) 実際に帰宅欲求が出てきた時に外に行かれたことはありますか?
徳市恵美 職員が近寄るだけでも「ほっとけ!」と怒って、自動ドアを壊す勢いで叩いている。その時は来客者も職員玄関より出入りしてもらっている。そんな状態です。
土田和樹 その状態で玄関を開けたらどうなりますか?
徳市恵美 そのまま走って出て行ってしまいます。そういう時は申し訳ないですが、職員で押さえて出ないようにしている。
五十嵐千恵子(居宅A,CM) 担当ケアマネージャーさんはどのような対応をしますか?
徳市恵美 現状はケアマネージャーさんへ報告させて頂いています。家族によってはあまり薬を飲ませてほしくないと思っている方もいますし、(医療機関の)受診に関しては最終的にはご家族様になるのでなかなか動いてくれていない状況です。また他に、ご家族と利用者の二人暮らしで、ご家族様が入院されていて本人がショートステイを利用されているという方がいますが、最初の2、3日は泊まってくれましたが、その後は「家を留守にしており泥棒が入るといけないので帰る」と言い張って、(施設の)玄関の前でドアをドンドン叩いたり、フロアを徘徊したりしています。この方は新規の方で職員も対応が慣れていない状況でした。このように工夫はしているがどうしていいかわからない方が何人かいます。
川瀬敦士 いろいろと(落ち着かせることを)やってはいるけど、効果は一時的で、繰り返し起きているということですね。他に一時的でもいいので、こういう工夫をしているという方がいましたら教えてください。この点はもう少し、たくさんの方に話をして頂きたいところです。
関崎敦子(居宅D,CM) このケースは私の担当(ケアマネとして)ですが、男性で奥様と二人暮らしでしたが、奥様が入院中で、(本人が)自宅には帰れないという状況です。以前うちのお泊りデイサービスを利用してもらって対応したんですが、その時も全く同じ状態でした。自動ドアの所に行って、「帰らして下さい」と。まさにドアが割れそうな勢いでした。妻が帰ってきていると思っているようでした。そこで夜の9時頃、「わかりました。自宅に戻りましょう」と言って、一緒に自宅に行きました。自宅は真っ暗で玄関のドアも開きませんでした。「奥さんいらっしゃらないでしょ」、「ご飯食べられないでしょ。帰りましょう」と言って、実際に本気で向き合わせて頂きました。「私たちもあなたをここに置いていくわけにはいきません!」と毅然とした態度をとって言いました。そうしたら、ちょっとしょぼくれた状態で一緒に施設に戻って頂いて、一夜は過ごして頂きました。
川瀬敦士(川瀬,リハ) 納得して頂いた後は、少し落ち着いているのですか?
関崎敦子 戻ってからは、先月の時点では、ご飯を食べてお休み頂きました。確かに落ち着かない状態で、15分おき位にトイレに行っていましたが、その後は全く帰宅欲求もなく一晩無事に過ごして頂きました。翌日もあきらめたのか、しっかりデイサービスをご利用頂きました。時には本気で向き合って、“騙す”という言葉はあまり好きではありませんので、「あなたも帰りたいでしょうけど、私たちも帰すわけにはいきません!」と毅然とした態度で接することも大事だと思います。
川瀬敦士 時にはそのような対応も必要かもしれませんね。今回の認魂では、そういった対応がいつもできるわけではないとも思いますので、出来ない時にどう切り抜けるか、その策も考えていきたいと思います。例えばこれは当法人デイケア(川瀬)の一人のスタッフの意見ですが、暴言で怒っている人に対しては、場所を変える、対応するスタッフを変える、何人ものスタッフでわーわーと言わずに一人で対応し「はいはい」と傾聴する、等の対応が比較的うまくいったという印象のようです
高橋芳雄(川瀬,介) 戦闘態勢に入っている人に対してこっちも戦闘態勢に入ると喧嘩になりますので、軽く受け流す、皆さんも十分ご存知と思いますが、そういうスキルも職員は持っていると良いと思います。
川瀬敦士 また別のスタッフの意見ですが、一度1人にさせて気持ちを落ち着かせる、落ち着いた後に軽い話から始める、その人が興味を持つようなことに誘う、話も出来ない場合はただ隣に座って話しかけないでタイミングをみて少し話しかける、などの方法もあるようです。本人が何かを主張している時にはどこかに気分転換させなきゃいけない。例えば家に帰りたいのであれば、「家に帰ってどんなことをしますか?どうやって行きますか?」などの問いかけなどで繋げていくとか・・。何か会話の中での工夫はありますか? ショートステイ(川瀬)の庄司さんはどうですか? 帰すことが出来ないという夜が今までにもたくさんあると思いますが、その時はどのような工夫をされていますか?
庄司俊彦(川瀬,介) スタッフがいる時はいいですが、夜間帯でスタッフが1人の時は、ずっと聞いているしかない。この前も、女性スタッフ1人の夜勤帯に暴れる方がいらっしゃいました。叩かれ蹴られましたが、その夜は何とか踏ん張ってくれました。その後、先生に相談し薬を処方して頂きましたが、薬が効かない場合は本当にどうしたらいいのでしょう?
川瀬神経内科クリニック 介護職 庄司俊彦 氏
川瀬敦士 薬以外で関わりの中で気分を切り替えたりすることは難しいですか?
庄司俊彦 限界はありますね。
川瀬敦士 皆さんは何か良い方法はないでしょうか?
小林英子(訪介,介) 一旦出かけるはだめですか?もしくは場所を変えるとか。
川瀬敦士(川瀬,リハ) (外まで一緒に行く時間がなくても)別室で話を聞きましょうとかね。また別の介護スタッフの意見ですが、「どうして帰してくれないのか。どうして開けてくれないのか」に対して、「私はここの鍵を持っていないから開けたくても開けられないんですよ。上司に相談します」など、あまり相手に期待をもたせない返事が良かったりもするのでしょうか?
高橋芳雄(川瀬,介) 自分にとっていい言葉とかは意外と認知症の方でも覚えていたりしますので、都合のいい騙し方をすると、「さっきと言っていることが違うじゃないか」と言われてしまい、信頼関係が損なわれることもある。なので、関崎さんがおっしゃったようにある程度毅然とした対応をするタイミングも必要ですよね。ただしそのタイミングを間違えると大変なことになる。
川瀬敦士 相手の怒りを助長させないようにうまくやり取りできる介護スタッフの方とあまり得意ではない方もいたりするのではないかと思うのですが、上手な人は会話の中でどういうやり取りをしているのでしょう?
原島哲志(川瀬,介) 本当に向き合えているかどうかというところが一番かなと。(相手にも)伝わるし、こっちも(その人の気持ちや真意を)捉えやすくなる。介護員と利用者という関係ではなくて、一人の人間としての関わり方みたいなのがすごく伝わるのではないでしょうか。そういうところが上手な人と、(仕事として)割り切ってしている人とでは明らかに違うと思いますよ。
川瀬敦士 そういうのは伝わっちゃうんですか?
原島哲志 すぐにばれますね。「どうしよう?(困ったな)」みたいなのも相手にすぐに伝わってしまいますね。
川瀬敦士 こちら側にも不安があればすぐに伝わってしまいますよね。今日のこの会ですべて答えが出ることはないと思いますが、このように皆さんで苦労していることを話し合って、また持ち帰って整理して頂きたいと思います。それではここで休憩に入り、その後はまとめと感想になります。
まとめ
川瀬敦士 それではまとめに入りたいと思います。こちらは暴言暴力に対するケアについて、いくつかの書籍からの抜粋です。暴言・暴力にどう対応するかのまとめですが、①事前に予防策を講じ、②怒りを助長させずに、③いかに気持ちを切り替えてもらうか、という事が重要と思います。事前の予防策としては、原因(過去の経験から)を探り本人が嫌がることをしない、間違いを指摘しない等、まず怒りを起こさせない。次に怒りが出てしまった場合は、反論しない、囲まない、本人の言ったことを共感している態度を示す、ということが大事かなと思います。そして最後に気持ちの切り替えとして、場所を変える、対象者と離す、対応する人(スタッフ)を変える、役割を決めておいて複数のスタッフで連動して対応する、してほしいこと等はタイミングを変える、というようなことが重要ですね。では最後に1人ずつ感想を言っていただきたいと思います。
暴言・暴力に役立つ実践介護テクニック
事前に予防策を講じ、 | 原因(過去の経験から)を探り、本人が嫌がることをしない、間違いを指摘しない等、まず怒りを起こさせない。 |
怒りを助長させず、 | 反論しない、囲まない、本人の言ったことを共感している態度を示す。 |
いかに気持ちを切り替えてもらうか。 | 場所を変える、対象者と離す、対応する人(スタッフ)変える、役割を決めておいて複数のスタッフで連動して対応する、してほしいこと等はタイミングを変える。 |
感想
川瀬敦士(川瀬,リハ) では最後に1人ずつ感想を言っていただきたいと思います。
関崎敦子(居宅D,CM) ありがとうございました。いろんな事例があり驚かせられました。この人は認知症だからと上から目線でものを言ってしまうと必ず、私の持論でもありますが、「認知の人は見抜くぞ」と。私を甘く見ているなという事を見抜いてしまう。本音でその人と向き合うことがとても大事だということを改めて実感させて頂きました。本当にいい機会に参加させて頂きありがとうございました。
小林和美(居宅D,CM) サービス付き高齢者向け住宅の中にある居宅介護支援事業部にいますが、最近入居されてくる方が3A、3Bがついている方で、ここはグループホームだったかなと錯覚するくらい次々来られています。認知症の方で「この意地悪ババー」と言われるお婆ちゃんを担当していますが、今日はいっぱい参考になることを聞かせて頂きましたので、これからも活かしていきたいと思います。ありがとうございました。
さわやか苑三条東 居宅介護支援事業部 ケアマネージャー 小林和美 氏
長岡敬一郎(ショート,介) 初めて参加させて頂きました。いろいろなお話を聞かせて頂いて大変勉強になりました。現場で介護をやっておりますが、やっぱり1人1人認知の方の対応が全く違って職員が変わるだけで言葉遣いが変わりますのでその辺を現場の職員と話をして活かしていきたいと思います。今日はありがとうございました。
あさひケアセンター月の郷 介護職 長岡敬一郎 氏
三富晴美(GH-B,介) 初めて参加させて頂きました。皆さんの事例や経験を聞かせて頂き自分の会社のグループホームはどうだったかと振り返させていただきました。年齢の若い60代後半の方がいまして、どう対応していこうかと思いながら、ここで学んだ事を活かしていこうと思いました。どうもありがとうございました。
徳市恵美(ショート,介) いろんな対応や事例を聞かせて頂きとても勉強になりました。帰宅欲求の事例をあげさせてもらいましたが、また来たいと思っていただけるような対応を職員と検討していきたいと思います。ありがとうございました。
愛の家グループホーム三条上須頃 介護職 三富晴美 氏
土田和樹(GH-A,介) 皆さんの事例を聞かせて頂いたり、ご意見を頂いたり、すごく参考になり共感できる部分もあってとても有意義な時間を過ごさせて頂きました。今日はありがとうございました。
徳長英人(GH-A,介) 暴言・暴力のある方がうちの施設にもいますので、今回の話し合いを参考に今後のケアに活かしていきたいと思います。今日はありがとうございました。
はあとふるあたごグループホーム三条 介護職 徳長英人 氏
土田友美(GH-A,介) ご意見をたくさんもらったのでそれを持ち帰って話し合いたいと思います。ここで学んだ方法を試してみたいと思います。ありがとうございました。
坂井美和子(川瀬,看) 先程の事例のように認知症の薬や身体的なことが原因で暴言・暴力の症状がみられることがありました。もし対応が難しければいつでも受診して下さい。力になりたいと思います。ありがとうございました。
川瀬神経内科クリニック 看護師 坂井美和子 氏
渡辺美佳子(川瀬,CM) 今日は皆さんの事例をうかがって大変勉強になりました。私が感じたのは、皆さん本当に暴言とか暴力の方の事を思って接しておられるなということを感じましたし、自分がもしその人の立場だったら、という言葉を聞いて私自身が年を取った時にそういった方に対応してもらえたら本当にいいと思いました。
庄司俊彦(川瀬,介) 皆さんいろんな視点からご意見や考えを聞くことが出来てとても参考になりました。また現場に戻って皆で共有していろいろと工夫して介護に当たりたいと思います。ありがとうございました。
石丸祐子(居宅C,CM) いろんな事例を聞かせて頂いて大変勉強になりました。私は直接介護に携わることはなく、皆さんにお世話になっている側で、大変な利用者の方をお願いすることもあって、今日皆さんの頑張っている様子を聞かせて頂いて本当に頭が下がる思いです。認知症の方の問題行動というのは何かしらのサインだと思うので、私はケアマネージャーとして何が元にあるのかを探っていく事の大切さを再認識させて頂きました。今日はありがとうございました。
居宅介護支援事業所長和園 ケアマネージャー 石丸祐子 氏
木村善行(特養B,介) 今日はとても参考になりました。これだけの方が集まっても正解がなかなか出てこないので、それだけ難しいと改めて感じました。介護保険の趣旨、条文にも書いてありますし、自分の施設でも方針に掲げてありますが、利用者の尊厳も守る介護をするということがあります。困っている利用者に対してその場しのぎでちょっと嘘をつくことがありますが、認知症の方もすべての脳の機能が正常じゃないわけではなくて、分かるところは分かると思います。その場しのぎの嘘は何とかく分かるようなところがあると思いますので、症状で様々な方がいますが、やはり誠実に対応しなければいけないところもあると思いました。認知症になると嘘をつかれてもしょうがないというのは、ちょっと気になる点でもありますので、その点について気を付けた対応を施設に持ち帰って検討したいと思います。ありがとうございました。
特別養護老人ホーム長和園 施設長 木村善行 氏
石附克也(居宅B,CM) 初めて参加させて頂きましたが、サービス事業所の方々の苦労が大変よくわかりました。認知症の方の行動には原因があると言われていますが、その原因を探るのはサービス事業所の方々だけでなくてケアマネージャーも一緒になって対応していかないといけないし、何か困っている方はアセスメント不足に非常に大きな要因があります。生活歴やライフイベントから原因が探れることがありますので、まずはケアマネージャーとしてきちんとその利用者の方と向き合って話をお聞きして、きちんとしたアセスメント、原因を探っていくことが必要だと感じました。
武石奈保子(特養B,介) 今回初めて参加させて頂きました。近隣の施設の方も同じような悩みを持っていいらっしゃることで共感できたところは非常に良かったと思いますし、認知症の人たち対応で興奮する前の予防の段階できちんと対応しなければいけないと再認識しました。予防の段階で出来る事、利用者の方たちの状態をきちんと把握して分析し、その内容をご家族、ケアマネージャーへ提供していく必要があると思いました。今回いろんなケースを聞くことができて、自分の施設での介護がどういうものなのか振り返る機会になってとても良かったと思います。ありがとうございました。
特別養護老人ホーム長和園 生活相談員 武石奈保子 氏
渡辺育美(特養A,介) 私自身経験が浅く、暴言・暴力があった時は怖さが自分の中に出てしまって、接することや話しかける事すら嫌になったことがあったのですが、それではいけないと自分の中では分かっていたので、今回事例も出させて頂きました。自分自身悩んでいる部分もあって、経験豊富な皆さまから教えて頂いて今後に活かしていきたいと思いました。ありがとうございました。
小林英子(訪介,介) 初めて参加させて頂きました。私は訪問介護をしているので家族の協力と生活歴を掘り下げて訪問したいのと思いました。訪問介護だと時間が限られていますので、その中で怒らせてまでは対応したくない人もいます。また認知症の方に「この人は認知症だから」と思って訪問には入っていないので、その点は自分は間違っていなかったと思いました。どうもありがとうございました。
稲田真澄(訪介,介) いろんな事例を聞かせて頂きちょっとびっくりしたところもあります。私も訪問介護をしていますが、時間がなく、焦りが伝わってしまうと上手くいかず失敗することもあります。逆に利用者さんときっちり向き合った時は上手くいったこともあります。やはり人間対人間のかかわり方が大切だと改めておもいました。ありがとうございました。
皆川尚久(川瀬,リハ) 訪問リハビリの中で暴言・暴力の方に関わった際には今回学んだ事を活かしていきたいと思いました。ありがとうございました。
川瀬神経内科クリニック 作業療法士 皆川尚久 氏
原島哲志(川瀬,介) 暴言暴力は永遠のテーマなのかなと思います。ただ、その裏には必ず何か原因があるのでそれを一人ではなくチームで関わることで探っていければと思います。同じような声かけを全員でしていても新しい発見がないので、いろんな役割を持ってそれぞれが個性ある接し方をすることでいろいろとヒントがでてくると思いました。今日はありがとうございました
横山省子(居宅A,CM) 私の中では暴言暴力で今日お聞きした事例だと、ショートステイとかはダメかなという認識で日頃支援計画を作っていましたが、案外そうでもなかったかなというところが私としては今日の発見でした。私の中では治療が優先する人だという思いが結構ありましたのでちょっと勉強不足だったと思い大変参考になりました。ありがとうございました。
五十嵐千恵子(居宅A,CM) 私はケアマネージャーですので毎日何となく心していることがあって、うちもデイサービスをやっていますが向かない人もいるし、そういうことが一番分かる人が認知症の人です。ショートステイに行っても本人が喜んでいられると、例えばご飯食べなかったのが食べるようになったという事は本人が向いているのだと思い、どんどんお願いしています。ショートステイ、デイサービス、訪問介護の事業所内で悩みを抱えないで、お医者さん、ケアマネージャーにも言っていただきたい。悪い事ばかりでなくいいことも言っていただきたいです。仮に解決できなくても共有できます。また医療の部分でどのくらい共有できるか、それだけ暴力があったりするとやはり医療第一で考えて、それは周りの人が困るのではなく、本人が一番つらくなっているので、その時に医療としてどのくらいかかわってもらえるかもポイントになると思います。今後ともよろしくお願い致します。
ケアセンターソレイユあざぶ ケアマネージャー 横山省子 氏
高橋芳雄(川瀬,介) 今回のテーマは暴言暴力でしたけれども、これはご本人の悲鳴、「わかってくれ」、「話をきいてくれ」と言う心の現れだと思います。何も言わないでずっと黙っているおとなしい人よりもむしろ私たちサービス提供者に何かを訴えてきてくれるありがたい人だと思うことで、また何かヒントが見えてくるのではないかと、本日の皆さんのお話を聞いて感じました。今日はありがとうございました。
川瀬弓子(川瀬,地域) 今日は三条市認知症地域支援推進員という立場で出席しておりますが、平成27年の新オレンジプランでは、今後、全市区町村に認知症地域支援推進員を配置することになっています。認知症の人を地域の社会の中で見ていこうという意味だと思います。今日皆さんからいただいたご意見や経験などは、地域の市民の皆様の日常生活の中で出てくることかと思います。このような場を使って話し合った皆様の悩みや対策方法などを、今度は市民の皆様にも還元していただければと思います。今日はありがとうございました。
川瀬神経内科クリニック 認知症地域支援専門員 川瀬弓子 氏
川瀬康裕(川瀬,介) お疲れ様でした。暴言暴力はご本人が一番つらい。それを医者としてどうするのか。なかなか重い言葉だと思いますが、単に薬を出せという意味ではないと思います。その中で本当の正解があるかどうかは分かりませんが、皆様の知恵を私も聞きたいと思うし、自分の考えもぶつけてみたいと思い、この会に参加しています。本人の悲鳴、上から目線で見ないとか、きちんと向き合うとか、認知症と言ったとたんに訳の分からない人間だと思わないで下さい、と言う事を多くの方が言っておられました。そういう意味では正論だと思います。帰りたい時にはきちんと事実を伝えることが正しいと思いますが、一方で本当にそれだけではすまないこと、本当のことを言ったら病状の悪化につながらないのか、人権侵害にならないのか、家族の反応がいろいろあるから難しいなとか、確かに医者の立場で本質とか正解だけ言う事は簡単だが、実際に現場いる時にはその問題があると思います。皆さん本当の所では人として付き合いたいと思っていてもいろんな問題があり、その垣根をどうやって減らしていけるかという場面もあると思います。そしてもう一つは尊厳を守ることは一番大事だと言われていますが、嘘をつくことは悪いことになるのか、そうでもないと思います。その人が本当に今求めている事を、どうやって見つけていくか、そして場合によっては嘘も方便と言われるようにそれはあると思います。本質の所は、きちんと向き合うこと、尊厳を守ることが重要ですが現実の場面ではスキルとしての嘘も方便があってもいいと思います。皆さん本気で話を聞いて、本気で学んで、本気で意見交換しているのだと思って良かったと思います。まだ次もよろしくお願い致します。今日はありがとうございました。
編集後記
この会の目的の一つは、認知症介護をしている介護スタッフや家族の方々に、現場で役立つケアのコツやテクニックをできるだけ多く具体的に提示することにあります。しかし、今回のテーマ「暴言・暴力」に関してはあまり具体的な対策案を提示できませんでした。それだけ難しいテーマであり、小手先の技は通用しない問題なのだと改めて感じました。たくさんの意見の中で印象に残ったのは、介護する側の本心が問われるというところでした。暴言暴力を起こすまでになっている人というのは、何かに困っていて、そうまでして何かを伝えたいという強いメッセージを本気で発していると考えられるわけで、それに対してこちらが表面的な言葉や態度で接していては、かえって苛立ちを助長させることもあるのかもしれません。できるなら関わり合いたくない、仕方ないから自分が対応している、というような気持ちが心の中にあると、それが伝わってしまう。まずはその人が困っていること、エネルギーをかけて発しようとしている強い思いを、正面から一度受け止めるというこちらの心の準備が重要なのだろうと思いました。それでも現場では毎日繰り返されることで家族や介護スタッフの方々は心身ともに疲弊していることと思います。暴言暴力に対する何かしらの具体的な対策と、それに加えて介護者が認知症の方とともに上手に楽に暮らす方法、その為に必要な介護する側の心の持ち方という点についてもいずれこの会で話し合ってみたいと思いました。