認知症とは、もともと正常であった記憶や判断力などの認知機能が何らかの原因によって徐々に低下し、日常生活や社会生活に支障がでてきた状態をいいます。主な症状はいわゆる「もの忘れ」が中心になり、初期は同じことを何度も言ったり聞いたり、しまい忘れや置き忘れが増えていつも探し物をしているなどの症状が見られます。また「もの忘れ」の他にも、精神症状や行動の障害も徐々に出てきます。たとえば不安、抑うつ、興奮、徘徊などがあり、これらは介護をするうえで大きな問題となります。
通常の認知症は突然に起こるということはなく、数年の経過でゆっくりと、しかも気付かないうちに進行していきます。認知症は早期に発見し、生活スタイルの改善や適切な治療を行えばその大部分は予防が可能です。
当クリニックでは様々な検査を組み合わせて、認知症をごく軽度の段階から早期に発見し、個々の患者様に合った適切な予防策を考え、認知症の発生や進行を遅らせることを目指しております。
また認知症が進行してしまった場合、見えないものが見えたり、聞こえない声が聞こえたりする幻覚や、『自分のものが盗まれた』、『家族に見捨てられる』等の被害妄想などが出現してくることがありますが、これらは適切な介護や薬物療法を行えば多くの場合コントロールが可能です。
高齢になり、すでに重度の認知症に進んでしまった場合でも、精神的に穏やかな状態にしてあげることが本人だけでなく家族の幸せにも繋がります。
かつては「何もできなくなる病気」、「なったら終わり」と思われていましたが、現在は高齢化に伴いその有病率は増え、決してめずらしい病気ではありません。そして現代の医療や介護制度によって、認知症になっても人生を楽しんでいる方々もたくさんいます。
もの忘れは、本人だけでなく一緒に暮らす家族にも非常に大きな負担がかかるため、家族の中で信頼関係が失われていくことがあります。
本人は自分の病気を分かっていないように思われがちですが、徐々に本当の自分がなくなっていくことに怯えながら頭の中は不安でいっぱいになっています。
もの忘れを指摘され叱られると、責められたと感じ孤独感を深め、妄想や興奮につながります。優しく受け止めることで、本人に安心してもらうことで穏やかに過ごすことができるようになります。
また人と交流し心を通わせる活発な暮らしはもの忘れの進行を予防します。
脳の萎縮の程度の評価、脳血管障害の有無などをチェックします。
ミニメンタルステート検査(MMSE)、ADAS(Alzheimer’s disease assessment scale)、
時計描画検査、CDR(clinical dementia rating)など
その他、脳波検査や心理テストもあります。
脳波検査や心理テストもあります。
脳の血管がつまって脳の機能がおかされる病気を脳梗塞と云い、脳の血管が破れて脳の機能がおかされる病気が脳出血と云います。
具体的には急に手足が動かなくなってしまったり、感覚が鈍くなってしまったりします。
また、言葉がうまく話せなくなることや、意識がなくなることもあります。
障害される血管により症状は多彩です。脳MRI画像:脳梗塞(右片麻痺)これら脳卒中の発生には高血圧や糖尿病、高脂血症、喫煙、肥満などが関与しているため、これらの治療が重要となります。
また一つ一つは症状の出ない小さな脳梗塞が少しずつ増えていき、その結果徐々に認知症が出現してくることがあり、脳血管性の認知症と呼びます。
脳ドックなどで現在何も症状のない人が脳のMRI検査をすると小さな脳梗塞が少しだけ発見されることがあります。
このような場合は将来脳梗塞や脳血管性の認知症を起こす危険性があるため特に注意が必要です。
脳梗塞と脳出血を合わせて脳血管障害といいますが、脳血管障害は定期的に必要な検査をし、適切な予防や治療をしていればほとんど確実に未然に防ぐことができる病気です。
脳の障害は起こしてしまってからでは取り返しがつきません。
急激な激しい初めて経験するような頭痛は、くも膜下出血など生命に関わる病気の可能性があります。ガツンと殴られたような痛みで、瞬時にピークに達し、嘔吐や意識障害を伴う場合は一層くも膜下出血を疑いますので早急に医師にかかるべきです。 言葉のもつれ、片麻痺などをともなう時は、脳出血や脳梗塞などが疑われます。発熱を伴う場合は、急性髄膜炎の可能性があります。いずれもできるだけ早く医師に受診するべきです。
徐々に進行する頭痛で、手足の麻痺や言葉のもつれ、ぼんやりするなどの症状を伴う時は、脳腫瘍、慢性硬膜下血腫などが疑われます。発熱を伴う場合は比較的まれではありますが、感染による脳膿瘍や亜急性の髄膜炎のこともあります。
いわゆる「頭痛持ち」の頭痛が多く、差し迫った危険のないことが多いですが、原因を明らかにして、痛みや不安から解放されれば日常生活の快適さが取り戻されます。大部分は、片頭痛と緊張型頭痛ですが、慢性頭痛症を正確に診断できる医師はまだ少ないのが現状です。
短くて数時間から長くて2~3日続く発作性の頭痛を繰り返す。痛みはこめかみなど片側に来ることが多く、ズキンズキンと脈打つように 痛み、徐々に強まり日常生活に差し支える程となる。ひどくなると嘔吐し、階段の昇り降りや、明るい光や物音で頭痛は強まる。片頭痛には、数分から一時間程度続く前兆を持つものもある。親など家族にも頭痛持ちがいることが多い。
後頭、側頭、前頭をぐるっと取り囲むように締め付ける痛みや、頭頂部も含め全体に重苦しく痛むなどの頭痛が2週間以上朝から晩までだらだらと続く。嘔吐もなく、運動、音、光などで増悪しない。同じ姿勢を続ける仕事で運動不足、眼鏡があっていないなど肩こり、首こりが起こりやすい生活と共に、精神的ストレスの続く時起きやすい。緊張がほぐれにくいタイプの人に多く見られる。
頭痛で来院される方は本当に多いのですが、頭痛の種類によって全く対処すべき方法が異なります。大きな病気の前兆であることもありますし、全く心配のないものもあります。また長年頭痛持ちで悩まれていた方で、適切な治療を受けてこられなかった方もたくさんいらっしゃいました。あきらめずに一度ご相談ください。
めまいは、身体のバランスを保つ機能に障害が起こると生じます。めまいの感じ方は、「自分のからだが回っている」、「自分のまわりの地球が回っている」、「雲の上を歩くようにふわふわする」、「谷底に引きずり込まれるように感じる」など、様々です。
めまいの原因として多いのは、耳と脳があります。耳の異常の場合は、良性発作性頭位変換性めまい、メニエール病、前庭神経炎、突発性難聴などがあります。脳の異常の場合は、脳卒中(脳梗塞・脳出血)や、椎骨脳底動脈不全、てんかん、聴神経腫瘍などがあります。
また起立性低血圧、暑さなどによる脱水も原因に成り得ます。
それぞれ危険性や治療法が異なります。放っておいてよいものと今すぐに治療が必要なものがありますので、原因をはっきりさせることは重要です。
耳鼻科の病気で起こることは比較的よく知られていますが、脳に原因があって起こるめまいは本当に注意が必要な場合が多いです。これまでなかったのにめまいを感じるようになった方は一度脳の検査をお勧めします。
腰痛や手足のしびれは高齢の多くの方が悩まれているとても頻度の高い症状の一つです。その原因には、脳梗塞など頭蓋骨の中の病気が原因の場合と、加齢によって変形した頸椎や腰椎が神経を圧迫して起こる場合、さらに手や足の中を伝わっていく末梢神経が原因となることもあります。
当然その原因によって治療法は異なりますが、同じしびれでもその原因がどこにあるかを見つけることは実はそれほど簡単なことではありません。医療の世界では、頭蓋骨や脊髄は脳外科、脊椎や四肢の骨・関節は整形外科というように体の部位によって専門領域が分かれているためです。
しびれや痛みは、四肢の末梢神経→脊髄→脳幹→大脳という神経を伝える経路の中のどこかに必ず異常があって生じます。神経内科は、神経系すべてを見ている科であり、原因がどこにあるのかを診断することが専門の科です。
通常は内服薬やリハビリなどで症状を緩和する治療を行います。
症状がひどく手術が必要なものであった場合は、それぞれの専門科へ紹介いたします。例えば骨や関節の病気がしびれや麻痺の原因ならば整形外科に、脳腫瘍や外傷による血腫のため頭蓋内の手術が必要なときは脳神経外科に紹介いたします。また精神的なものが原因の場合は精神科に紹介することもあります。
手足の痛みやしびれは頸や腰の背骨のヘルニアや変形によることが多いです。急に片方の口と掌がしびれるときは脳梗塞が疑われます。朝方手の指先がしびれて痛む場合は手首で神経が腱に圧迫されてしびれる手根管症候群もよくある病気です。糖尿病で手足の末梢神経が傷んでしびれが起こることも珍しくありません。
一般的に良く知られている症状は手足をつっぱり、意識をなくし、口から泡をふくという発作ですが、短時間ぼーとしたり、意識がありながら手足が勝手に動くというようなやや変わったタイプの発作もあります。てんかん発作は発作が断続していながら未治療でいると脳に障害をきたすこともあるため正しく診断し、てんかんの病勢を把握することが必要です。脳波やMRIで評価し、必要があれば内服薬で治療します。脳腫瘍や脳出血などの何らかの脳の病気があって二次的に起こってくるてんかんもあります。
実は規則正しい内服治療が最も必須で、かつ有効な疾患かもしれません。てんかんは若い方でも状況によってはたった一度の発作で命を落とす可能性のある病気です。
片側顔面けいれんは、通常、片側の顔面筋が自分は意図していないのにけいれんし続けてしまう病気です。発症の原因としては、顔面神経が脳幹から出る部分で、血管によって圧迫されるために起こることが多いと考えられています。はじめの症状は、左右どちらかの上まぶたか下まぶたのけいれんに始まり、進行すると、同じ側の目の周りの他の筋肉や口の周りの筋肉もけいれんするようになります。重症になると、けいれんが持続するようになってしまいます。 内服薬による治療もありますが、効果の乏しいことも多く、長期に服用すると副作用の危険もあります。その場合は、けいれんしている筋にボツリヌストキシンという薬を注射する治療があります。治療時間が短く、麻酔なども必要ないため外来で出来ます。非常に効果の高い治療法ですが、効果の持続期間が数ヶ月のため、効果が切れてきた場合は繰り返し治療を受ける必要があります。
顔の半分が勝手に動く、眼の周りがピクピクするといった症状の病気です。50歳代くらいの女性が多いです。内服治療もありますが、ボトックス注射という治療が非常に有効なため、現在は多くの方がこの治療を続けていらっしゃいます。
主たる症状は、身体の動きが遅くなる(無動)、何もしていないのに手が震える(振戦)、関節の動きが固くなる(筋固縮)です。また進行すると転びやすくなります(姿勢反射障害)。典型的な症状としては、歩くときに前屈みになり、歩幅が狭く、手の振りがなくなり、前につんのめるように転ぶということがあります。また顔の表情も硬くなります。 日本では難病に指定されておりますが、効果のあるお薬がたくさんあります。使い分けに専門的な知識がいりますので、神経内科での治療が必要になります。当院ではなるべく薬をたくさん使わない治療を目指し、リハビリテーションも積極的に行っております。
体が固くなり、動きが遅くなる病気です。神経内科ではとても有名な病気で、患者様の数も実際にかなり多いです。治療薬がたくさんありますが、似て非なる病気もたくさんありますので、まずは正確な診断が必要です。当クリニックではパーキンソン病の特別なリハビリテーションも積極的に行っています。
いびきをかく、夜中に呼吸が止まったようになる、日中ずっと眠たい、突然眠たくなる、集中力がないなどの症状があります。睡眠中に体の中の酸素が足りなくなり、良質な睡眠が取れず、いろいろな臓器にダメージを与えている可能性があります。今は良い治療法がありますのでご相談ください。
まだまだその存在が一般に知られておらず、気づかれていない方が多いと思われます。思い当たる症状がある方は簡単な検査がありますので是非チェックしてみてください。
これらはいわゆる神経難病と呼ばれるものがほとんどです。我々神経内科医が診るべき疾患であり、治さなければならない疾患です。日々世界中で研究が行われておりますが、いまだ有効な治療法のないものがあります。しかし、数年前までは不治の病であったものでも現在は治療法の確立した疾患もあります。微力ですが私達も皆様の生活の中で少しでもお力になりたいと思っています。
我々のクリニックでは全て解決できないこともたくさんあります。近隣の医療機関、開業の先生方と密に連携を取り、皆様の問題を解決したいと考えています。