第6回テーマ : 入浴時の問題にどう対応するか?
参加者:
【介護職】加藤君代1) 高橋芳雄1) 長谷川綾子2) 原島哲志1) 布施良友1) 丸山麻子2)
【訪問入浴介護員】坂井覚子3) 羽賀美里3)
【介護支援専門員】原知子4) 渡辺美佳子1)
【福祉用具専門相談員】高木正史5)
【作業療法士】川瀬敦士1)
【看護師】轡田由紀3) 坂井美和子1) 難波京子6) 星野久美子7)
【医師】川瀬康裕1) 川瀬裕士1)
介護職・訪問入浴介護員・・・以下「介」
介護支援専門員・・・以下「CM」
福祉用具専門相談員・・・以下「福」
作業療法士・・・以下「リハ」
看護師・・・以下「看」
1)川瀬神経内科クリニック、通所リハビリ樫の森・かわせみ、サービス付き高齢者向け住宅かえるハウス(以下「川瀬」)
2)うらだての里デイサービスセンター(以下「デイサ」)
3)ニチイケアセンターいしがみ(以下「訪入」)
4)居宅介護支援センターつかのめの里(以下「居宅」)
5)株式会社フチオカ(以下「フチ」)
6)三条東老人訪問看護ステーション(以下「訪看A」)
7)ライフパートナー県央ステーション(以下「訪看B」)
氏 名(所属・職種)
川瀬敦士(川瀬・リハ) 只今より第6回川瀬神経内科クリニック認知症疾患医療センター認知症研修会「認魂」を開催いたします。まず初めに開会挨拶と本研修会の趣旨説明を当院副院長の川瀬裕士よりお願いします。
川瀬神経内科クリニック 作業療法士 川瀬敦士 氏
川瀬裕士(川瀬・医師) 皆様、お忙しいところお集まりいただきありがとうございます。この研修会はもう6回目なので、当院のホームページで見たり、自分の施設の他の方が参加してその様子を聞いたりして、どういった研修会であったか、何となくわかっている方も多いのではないかと思います。我々は医者として、看護師として、あるいは介護職として、日頃から認知症に関するいろんな問題を解決していこうと努力はしていますが、なかなか難しいということが実際にあります。BPSD *1という言葉があって記憶力の低下ではなく、認知症にまつわる問題行動、周りから見て問題となる行動というものがあります。例えば怒ってしまうとか、妄想があるとか。今年、認知症疾患治療ガイドラインというものが、5年ぶり改定されます。
*1 BPSD ( behavioral and psychological symptoms of dementia ) : 認知症に伴う行動心理症状。興奮、易刺激性、妄想、幻覚、不安、うつ、アパシーなど。
その中に「認知症に伴うBPSDに関しては非薬物療法を十分に行った上で、それでもなお治らない症状に対してのみ薬を使って治療してください、十分に非薬物療法やって、それでもだめだった場合のみ唯一薬を使っていいですよ」というようなことが書かれています。認知症のBPSDに対する非薬物療法の重要性というものが、今まで以上にはっきりと示されています。この会は、認知症のケアの質を高めること、皆さんの知恵をお借りしながら、会議としてまとめて、多くの人がいつでも見られるような形にして発信することを目的としています。色々な細かい疑問とか、言いたいこととか、躊躇なくお話頂いて構いません。今回も活発なご討議をよろしくお願い致します。
川瀬神経内科クリニック 医師 川瀬裕士 氏
川瀬敦士 今回で6回目になりますが、今までで当院スタッフを除くと延べ55名の方にご参加いただいております。認知症の介護に携わる方はこの地域にはたくさんいるのだと感じています。この研修会は、皆さん日頃から認知症の介護に関わっている方が多いと思いますので、教科書に書かれていることはやってみて、理解した上で、本当にそれでいいのかといろいろと疑問を持っている方もいると思いますので、いくつかの例を元に皆さんと話し合いをしていきたいと思います。
川瀬敦士 今までの参加者は介護の方が一番多くて、次にケアマネージャーさんでしたが、今回は看護師さんが多く来ていただいております。前回の排泄のテーマの際には燕労災の排泄ケア専門の看護師さんにも来ていただきまして、貴重なご意見をたくさんいただいて大変勉強になりました。今回は、お風呂に関する福祉用具のアドバイスをいただきたいと思いまして福祉用具を取り扱っている会社の高木さんにお願いして参加していただきました。
まず入浴時の問題に対応することの意義の確認です。(図1)次に入浴時の問題に関する本人の声と気持ちとして次の事が考えられます(図2)。次に介護者の声、気持ちとしてこのような事が考えられるかと思います(図3)。ここからはいくつかの例を紹介していきます。渡辺さんからの事例です。説明をお願いします。
図1 : 入浴時の問題に対応することの意義
・衛生面の改善により、感染症のリスクを減らすことができる ・身体的な不快感を緩和し、精神的にもリラックスできる ・異臭などを防ぎ、気持ちよい環境を維持できる |
図2 : 本人の声・気持ち
・服を脱ぎたくない (裸をみられたくない、ボロボロで下着に自信がない) ・湯船に入りたくない (怖い、入り方が分からない) ・シャワーが嫌い (怖い、冷たい、熱い) ・なぜ今入るのか意味がわからない ・(少し前に)入った(思っている) ・一人で入りたい など |
図3 : 介護者の声・気持ち
・臭い ・汗や排泄物などで汚れているからきれいにしてほしい ・ずっと入っていない ・促して断られる ・服をずっと着替えない、同じ服ばかり着ている ・入浴中に暴れる、(介助を)嫌がる ・入っていないのに入ったと言う ・きちんと洗えていない など |
浴室でいたずら、廊下で裸 ケース1
渡辺美佳子(川瀬・CM) ご家族の方から話を聞くと、いたずらをして浴室からなかなか出てこなくて困っている。入浴中にシャンプーボトルや洗剤スプレーを空になるほど使ったり、リンスを洗い場にまいて、歯ブラシでゴシゴシこすったりしていつまでもヌルヌルしているので終わらない。「誰も掃除しないから俺がするんだ!」と怒りながら歯ブラシでゴシゴシしている状態だそうです。結果的には、自宅での入浴は中止してデイサービスで入ることになりました。またその方は、未だに廊下で裸になり、お風呂場に行くのではなく、洋式トイレに溜まっている水に手を入れて、「こんな冷たい水に誰が入るんだ!風邪ひくねっか」と廊下で裸になって怒っています。
川瀬神経内科クリニック 介護支援専門員 渡辺美佳子 氏
川瀬敦士(川瀬・リハ) この方は入浴の場所と方法が分からなくなっているようです。自宅で入れなくなった方がデイサービスで入れるようになったということは結構あるのでしょうか?丸山さん、いかがですか?
丸山麻子(デイサ・介) そうですね、世間体を気にしている方は、他の人も入っているので自分も入らなきゃだめだと思い、入られる方もいます。家では入っていませんが、周りの皆が入っているし、流れに乗らなければだめだと思って入られる方もいます。
川瀬敦士 お一人で入っている時は歯ブラシ等で掃除をし始めてしまいますが、施設であれば介助の方がいて上手くシャンプーやリンスを渡してあげたりしてスムーズに入浴できることもあるのですね。
うらだての里デイサービスセンター 介護職 丸山麻子 氏
化粧の状態から、よその風呂に入るのが嫌 ケース2
川瀬敦士(川瀬・リハ) 別の方の例に行きましょう。汚れや化粧の状態から入浴していないと思われた方で、サービス利用中の入浴を勧めたが、「自宅で入浴しています、よその風呂に入るのが嫌です」と丁寧に断られていた。何度もチャレンジして最終的には入浴できるようになったケースだそうです。この方は、自宅に訪問した時に、入浴していないなと思われたようですが、このような人をどうやってサービスに結び付けているのですか? 原さんどうですか?
原知子(居宅・CM)私は4月からケアマネージャーになったばかりのため、こういったケースには当たったことはないのですが、やはり、入浴することは楽しい事だとアピールしながらサービスに結びつけていければと思いますし、また見学に来ていただけるようであればこのように入浴していますと説明して利用に結びつけていければ良いと思います。
川瀬敦士 この方は何度もチャレンジしてということですが、実際にはどのように?
渡辺美佳子(川瀬・CM) 断り方がとても丁寧で上手な方でした。無理強いをしてしまうと、やはりいくら認知症の方でも全く記憶がなくなるわけではないので、無理に進められて、無理やりお風呂に入らせられたという記憶が残ると、今度は参加すらできなくなるのではと思います。この方には参加だけは継続してもらいたいので、無理強いをせずにお風呂に入ってもらうとなると、何度も何度もチャレンジして、「自宅で入っています」とか「お風呂に入るのは嫌いなので入りません」とか、丁寧に断られると、二の手、三の手と次回に来た時に違う手段で、例えば、看護師さんが背中の確認させてほしいので脱衣場に来てくださいとか、次の手をやっていくうちに何回もチャレンジした結果、うまくできたケースです。
居宅介護支援センターつかのめの里 介護支援専門員 原知子 氏
川瀬裕士(川瀬・医師) 色々と試して、上手くいった時のきっかけというのは? それはどこの施設でしたか?
渡辺美佳子 樫の森を利用している方です。
高橋芳雄(川瀬・介) お化粧を何日も重ね重ね塗られておりお肌が少し荒れていましたので、「一度お風呂できれいにお化粧を落としましょうよ。そしてまたきれいにお化粧しましょうよ」、と声を掛けたところ、すんなり入浴していただきました。
川瀬神経内科クリニック 介護職 高橋芳雄 氏
川瀬敦士(川瀬・リハ) 美意識の高い方で、そこを刺激したことでうまくいった例ですね。
川瀬裕士(川瀬・医師) それ以降はどうですか?
高橋芳雄(川瀬・介) 今でも入浴していただいています。もちろんお化粧もしています。2回目以降は特にお化粧の話をしなくてもすんなり入浴できています。
川瀬敦士 一つ乗り越えると、定着することもあるかもしれませんね。
渡辺美佳子(川瀬・CM) 今はとても気持ちよくお風呂に誘っていただいてうれしく感じているようです。うれしいイメージが残っているようです。
川瀬敦士 入浴したがらなかった理由はなんですか?
渡辺美佳子 もともと自宅以外のお風呂に入ることが本当に嫌いな方です。
高橋芳雄 温泉もあまり好きではないようです。
川瀬敦士 サービスを利用する前は自宅で入浴していたのでしょうか?
高橋芳雄 この方はもともとは自宅でお風呂に入っていました。ただ十分な入浴はできていないようでした。
渡辺美佳子 一人暮らしの方です。
川瀬敦士 自宅でのお風呂がだんだん入れなくなってきたので、サービスを利用してお風呂に入ってもらうようにケアプランを考えたのですね。
渡辺美佳子 この方は入浴を目的にサービスを利用し始めたわけではありませんが、関わりの中でお風呂に入れていないことが分かり、サービスでお風呂のプランを位置付けたケースです。
川瀬敦士 訪問していく中で、この人はお風呂に入れていないと気づき、プランに位置付けていくということですね。気づくポイントとしてはお化粧がボロボロになっているとかの他はありましたか?
渡辺美佳子 他には髪がベタベタしていました。
川瀬敦士 ありがとうございました。
プライド ケース3
川瀬敦士 次は、丸山さんが出してくれた例です。説明をお願いします。
丸山麻子(デイサ・介護) はい、85才の男性の方です。妻と二人暮らしで自宅入浴は困難です。歩行器を使用し、時々膝折れがあるためチェア浴で入浴しています。他の施設でも入浴拒否が見られています。ご本人が言うには「風呂なんか入らなくていい!ボケの集まりで嫌だ、面倒だ」と言って、ひどい時は床に寝転がったり、目を閉じたまま返答がなかったりしています。一度ベッドで休んでもらい、最後に入浴するとスムーズに入れたこともありますが、ベッドから起きてくれないこともあり困っている状況です。
川瀬敦士 どのような対応をした方が良いでしょうか。難波さんいかがでしょうか?
難波京子(訪看A・看) そうですね、膝折があるためお風呂に入ることが、ご本人的には大変なところもあるのかなと感じられますし、身体的な疲れがあるために入りたくないと感じることが、第一にあり、気持ち的なこともあるのかもしれませんし、情報が少ないのでなんともいえませんが・・・
川瀬敦士 それでは詳しい状況を聞いて行きましょう。
三条東老人訪問看護ステーション 看護師 難波京子 氏
丸山麻子(デイサ・介) 今は、朝来た時にまだ誰もいない朝一番で入った方が良いのか、それとも少し休んでからの方が良いのか、本人に入浴の時間を決めてもらうことにしました。そうすると、一回ベッドで休んでから入ると言われて、だいたいお昼前の11時頃から入ってくれることが多かったのですが、タイミングを逃すと、もうお昼になるから起きないということもあります。
川瀬裕士(川瀬・医師) その方は、デイサービスにいる間は、ずっと寝ていることが多いのですか?
丸山麻子 いいえ、そうではないです。ずっと起きていられる方ですが、お風呂に入りたくないから「ベッドで寝かせてくれ」と言うのだと思います。
難波京子(訪看A・看) お風呂以外で他に拒否があるのですか?お風呂が嫌いなのか、それとも着替えとか他に本人のこだわりが強くて拒否する理由があるのでしょうか?
丸山麻子 デイサービスに来ること自体が自分は行く必要が無いと思っているようです。ゲームとかは参加すればしますが、ちょっとでも気が向かないと横になってしまいます。1対1でお話しするといろいろ話しをしてくださいますが、「自分はしっかりしているのでそんな中には入らない」と言います。またこの方の入るお風呂は、一般の方が入る一般浴ではなく、機械浴で座って入るタイプのお風呂なので、その座って入っている人達を見ると、「ボケ」とか、「あんなのと一緒にするな」とか言われます。
川瀬裕士 入浴している時は気持ちいいとか言うのではなく、悪態をついている状態なのですか?
長谷川綾子(デイサ・介) 入っている時は隣で入っている利用者様に暴言を吐かれたりします。
うらだての里デイサービスセンター 介護職 長谷川綾子 氏
川瀬裕士 今もそのような状態ですか?
丸山麻子 一時期よりは少し治まってきましたが、ひどい時は裸で床に寝そべっていました。
難波京子 先ほど希望を聞いて、ご自身で入りたい時間帯を決めていただいていることはすごく良いと思います。うちの職員にも入浴拒否のある方ヘはどうしていますか?と聞いたところ、時間をずらしたりとか、男性女性と違う職員が交互に誘ってみたりとか、いろいろとやってみるとすっと入れることがあるようです。男性でプライドのある方は多いですので、「自分はしっかりしているので、自分は(介護施設などに)行く必要が無い」と言うこともわかります。せっかく来ていただくので、その中でも楽しい時間を過ごしてほしいと思います。一つでもご本人が楽しめるように、気の合う他の利用者さんや職員の方と趣味とかの話をして、楽しく過ごす時間の中で、お風呂もあるよと思っていただきたいと思います。大変だとは思いますが・・・
川瀬敦士(川瀬・リハ) ありがとうございます。お風呂のことだけではなく、プライドのある方なので何か一日を通しての関わり方とか、出来る範囲で行っていければいいのではないでしょうか?
川瀬裕士(川瀬・医師) (その方は)お仕事は何をされていたのですか?
丸山麻子(デイサ・介) 定年までずっとトラックの運転手さんをしていました。
川瀬敦士 何か満たされないことがあるのでしょうか? 構ってほしいのでしょうか?
丸山麻子 酸素(治療)をしている奥様と2人暮らしで、奥様に対してはすごく優しくて、その奥様が気になってデイサービスには行きたくないとよく言われます。娘さんも県外におられて、やはり寂しいのではないかと思います。
川瀬敦士 介護する側だったので、「俺がこんな世話されている場合じゃないよ」と思っているのかもしれませんね。
何度も言い聞かせる、下着の汚れ ケース4
川瀬敦士 それでは次の事例です。長谷川さんお願いします。
長谷川綾子(デイサ・介) 84才の女性です。長男と二人暮らしで、近くの娘さんが毎日世話に来ています。独歩で、一般浴で入浴しています。お風呂に誘うと「朝、風呂に入ったから入らなくていい。何度も言うならもうこんな所やめる」と言われます。人が少ない時に声かけをしたり、時間を置いて声かけをしたりすると入浴できることもあるが、毎回拒否がありスムーズに入浴できず困っています。今日はスムーズに入浴されました。入らない時は何度誘っても入りません。大声を出されてしまって・・・。
丸山麻子 最近この方がスムーズに入れるようになったのは、朝、娘さんが送り出す時に、必ず本人に入浴するように言い聞かせています。朝の送迎車内でもずっと娘さんに言われたことを忘れないようにずっと言っているようです。「お風呂に入ってね、お風呂に入りに行くんだよ」と。そしてそのまま時間を置かずにお風呂に入るみたいなので、ここ2、3回はスムーズにいっています。
原島哲志(川瀬・介) そのことを覚えているうちは、比較的スムーズに入浴出来るのですね。
丸山麻子 そうですね、スムーズにいきます。人が大勢いると恥ずかしくて嫌みたいです。
川瀬神経内科クリニック 介護職 原島哲志 氏
川瀬裕士 この方も何か嫌な理由があると思うのですが、入浴中や入浴後は機嫌がいいのですか?
原島哲志 なぜ嫌なのか、理由を聞いたことはありますか?「なぜ、嫌なのですか」と。
丸山麻子 「朝、入ってきたから嫌です」と言っています。
川瀬裕士 理由としては、やはり恥ずかしいのですかねえ・・・?
丸山麻子(デイサ・介) 職場の他のスタッフが言うには、パンツが恥ずかしいのかもと。少し黄ばんでいるようです。
原島哲志(川瀬・介) よくありますよ。見られたくないですよね。
川瀬敦士(川瀬・リハ) このような人にはどういう声掛けが良いでしょうかね。星野さんいかがですか?
星野久美子(訪看B・看) 入浴拒否がそのパンツの汚れということであれば、その辺から解決策を探ってはどうでしょうか。
ライフパートナー県央ステーション 看護師 星野久美子 氏
川瀬裕士(川瀬・医師) 今もきっと「入るんだよ、入るんだよ」と何度も言われているから本人としてはしょうがなく恥ずかしい思いをしながら入っているのであれば、堂々と気持ちよく入れるような方法があればいいのですが・・
川瀬敦士 下着の色が、汚れが気になるということですが、サ高住かえるハウスではそのような方はいますか?加藤さん、そういう方はいますか?
加藤君代(川瀬・介) そうですね、下着とかの汚れは見られたくないから、とにかく脱いでもらう時には見て見ぬふりをしています。ご自身できちんと汚れているリハビリパンツを隠すようにして脱いで下に置かれますので、それを(その方が)お風呂場に入ったところで回収していきます。なるべくその方のプライドを守ってあげられるように、自分なりに考えて介助しています。やはり皆さん下着は気にされます。
川瀬神経内科クリニック 介護職 加藤君代 氏
川瀬敦士 介助する側は見て見ぬふりをするということですね。
加藤君代 服を脱ぐところは女同士でも気を使います。見えないように違う場所に行ったりとか。
川瀬裕士 あからさまではなく、さりげなく?
加藤君代 そうですね。今ちょうどその方のお風呂でしたが、やっぱり脱いだ時に隠すように小っちゃく丸めて、脱衣かごの中に入れられたので、(脱衣場から)お風呂場に行った時点で回収しました。
川瀬裕士 もちろん、1人で脱ぐことができなかったり転倒の危険があったりするから、必要な時にはすぐに手を添えられる位置にいながらも、さりげなく手助けをすると。「さあ脱いでください」ではなくて。
加藤君代 そうですね。その場所にドーンといるのではなく。
川瀬裕士 そのような気持ちをほとんどの人が、特に女性は持っているんだろうと思います。その中で、それをもう気にしないという人もいるだろうけど、おそらく多くの人は何かしら恥ずかしい、嫌な思いをしていてもしょうがないという気持ちで諦めている。そこでそういう小さな一つのアクションが、その人の気持ちを楽にさせているとしたら、それは結構大事なテクニックだと思います。
川瀬敦士(川瀬・リハ)なるべく自分で洗ってもらうとか、下着を脱げる人には自分で脱いでもらうとか、その方はきれいに丸めることが出来るようですし。
加藤君代(川瀬・介) その方自体は、背中だけ洗って、後はウォッシュタオルに石鹸を付けて渡せば、足の裏からすべてご自分で洗うことが出来る方です。
川瀬敦士 先ほど長谷川さんが言った女性の方は、汚れが恥ずかしいと言っていましたが、この方は自分でパンツを丸めたり出来ないのですか?
長谷川綾子(デイサ・介) 出来ます。
川瀬敦士 そこはそっと見守ってあげればいいのですね。
訪問入浴にて入浴拒否、入浴剤 ケース5
川瀬敦士 ニチイケアセンターいしがみさんは訪問入浴サービスですが、自宅でも入浴拒否する人はいますか?
坂井覚子(訪入・介) いました。女性でしたが、すごい入浴拒否のある方で認知症もありました。心臓が悪く在宅酸素を使っており外には出られないということで、在宅での入浴を希望されていました。大きいお風呂が来ただけで驚かれて、非常に興奮してしまいどうにもならない状況でした。服を脱ぐところから拒否をされ、「こんなお風呂には入りたくない」と言われました。そこでいろんな温泉の入浴剤の中から色々選んでもらい、「箱根とか、今日はどこにしようか?」などと言って、まずは「足だけでもつけてみますか?」と話しをしたりしましたが・・・
轡田由紀(訪入・看) 結局、身体の状態があまり良くなくてドクターストップがかかって中止となりました。
ニチイケアセンターいしがみ 訪問入浴介護員 坂井覚子 氏
坂井覚子 今回、この方のこともあって、私達はこの研修会に参加させていただきました。どうしたら(お風呂に)スムーズに入っていただけるのか? 色々なことをしても、どうしても入っていただけない人が出てきて。「すごく良かったよ」と一回入った時は言うんですよ。だけど2時間後には忘れてしまうわけですから、1週間後に行ったら、「何しに来たの!お断りしたはずだけど!」と言われ、だんだん息も上がってきてしまいました。体の状態もあまり良くないので、シャワー浴とかあまり心臓に負担のかからないように工夫しましたが、お部屋は暖かくしているのですが、「寒い、寒い」と言って、何でも入りたくない理由にして入りませんでした。家族は何とか入れてほしい。本人は入りたくない。ケアマネも入れてほしい。ご家族みんなに同席してもらってやっと入ったりもしました。無理強いはしない。無理強いをすると断固として嫌がります。(この方の場合)帰った時もありました。
川瀬敦士 訪問入浴は行った先で結果を出さなければなりませんからね、通所は1日の時間の中で人を変えたり、午前がだめであれば午後にしてみたりと出来るけれども、訪問の場合はその時間とか今いるメンバーで何とかしなければならないという思いもあるでしょうから。結構このような人はいらっしゃるのですか?
坂井覚子(訪入・介) 「こうゆうの(訪問入浴)にはお世話になりたくない」と言う方は過去にいました。「怖い、怖い」と言っていました。だけど、何回か話をしていくうちに本人も安心してスムーズに入れるようになりました。いまは身体の状態が良くなり、デイサービスに行かれるようになり訪問入浴は卒業されました。
川瀬敦士(川瀬・リハ) そもそも訪問入浴をご利用される方はどのような方ですか?
坂井覚子 ターミナル*2の方も多いです。障害の子供たちも(お風呂に)入れています。寝たきりになっているので、ベッドの横に浴槽を組み立てて入れます。デイサービスの利用を拒否されている方もいます。また退院後、病状が不安だから外に出ることに自分の中でまだ納得していない方で、少しずつ自信を持てるまで訪問入浴を使う方もいます。
川瀬敦士 ある意味では身体的に一番大変な人ですね。
坂井覚子 そうですね。
川瀬敦士 自分の体が思うように効かない部分がやはり怖さもあるでしょうし、加えて認知症があって「必要性を感じない」とかなると余計に大変でしょうけど。温泉の入浴剤でしょうか、これは一つ成果が出たということで、勉強になりました。
川瀬敦士 入浴剤は施設では入れたりしますか?入れたほうがいいのですか?
*2 ターミナルケア: 終末期の医療・看護・介護。老衰や末期ガンなどで死を回避することが困難な状態。
丸山麻子(デイサ・介) 喜びます。香りもいいし、色も着いていますし。「今日は〇〇の湯ですよ」とか。
川瀬敦士 話題にもなりますしね。デイケア樫の森ではどうですか?
高橋芳雄(川瀬 介) おっしゃる通りで、きっかけの一つにはなりますね。ただ樫の森ではにごり湯の入浴剤は使いません。お風呂の中の様子が分からなくなりますので、例えば足台を置いている場合もありますし、また利用者様の中にもお風呂の中の様子がどうなっているか分からず不安を感じる方もいらっしゃいました。以来透明な入浴剤を使うようにしています。
川瀬敦士 見え方はどうなんでしょうか?
坂井覚子 私たちのお風呂は常にお湯が巡回していますので、入浴剤を入れてもすぐに薄くなります。最終的には透明になります。
川瀬敦士 訪問入浴ではどう気持ちを乗せるかが重要のようですが、誘い方などについては、原島さんどうですか?
原島哲志(川瀬・介) (入浴拒否があった場合)タイミングをずらしたり、別のスタッフがお誘いしたりして対応しています。ただ認知症の方の中には、ここに住んでいるという認識よりは、ここに毎晩泊まりに来ているという認識の方もいます。その場合はご家族のお名前を出して「〇〇さんにお願いされていますので」と言うと納得してくれる場合もあります。あとは、「外出する前の日はなるべくお風呂に入っていてもらえるとありがたいです」と家族からお願いされることもあるので、「明日、外出するので今日は綺麗になっておいてくれと頼まれている」とそのままお伝えしています。出かけられるという喜びの方が、お風呂に入りたくないという気持ちよりも大きいのでしょうか、すんなり入ってくれる場合が多いです。入居者さんとスタッフの相性もあると思いますので、別のスタッフがお誘いすることもあります。かえるハウスで原則、女性には女性スタッフが入浴介助に入り、男性には男性スタッフが必ず入浴介助に入りますが、場合によっては男性スタッフが女性入居者さんを誘ってみると案外上手くいくことがあり、またその反対もありますので、臨機応変に対応しています。
川瀬敦士(川瀬・リハ) なるほど、先ほど家族の協力を得るということが出てきましたね。羽賀さん、訪問入浴をされていて、こんな言葉で気持ちを乗せたとかありますか?
羽賀美里(訪入・介) 40代の障害を持った女性の方がいらっしゃいまして、女性同士ですが、胸も見られるのが恥ずかしいようです。お尻も、普段はヘルパーが洗いますが、洗われるのが恥ずかしいということで、私達は、3人全員で、タオル等で隠して、「私達は見ていないから自分でゆっくりでいいから洗ってね」とか言っています。信頼関係を築いていかないとなかなかうまくは行きません。やはり人と人、そこからなのかなと思います。いろんな話をして時間をかけて信頼関係を築いていくことでしょうかね。隠すのもどう隠したら本人が気持ちよく洗えるかとか、綺麗にできるとかその都度考えながら対応しています。
川瀬敦士 そうですね。方法が色々と出てきますが、まずは人と人ですね。最もデリケートな部分ですからね。
ニチイケアセンターいしがみ 介護職 羽賀美里 氏
福祉用具
川瀬敦士 ここまで聞いて高木さんどうですか?何か道具で解決できそうなことはありますか?
高木正史(フチ・福) 今まで出てきたお話はどちらかというと入浴拒否をされている人、入りたがらない人にいかに入っていただくかという話でしたが、私の立場では、普段入浴の関係で相談を頂く内容というのは、入りたいんだけども、身体状態や浴室の環境で今のままでは危険を伴うということで、安全かつスムーズに入浴ができるために福祉用具、入浴用具の活用や浴室の改修等、環境を整える事です。今まで聞いていて、私が今まで聞いたことがないような事例を聞いて、新鮮と言うか、色々と感じさせられる部分も多かったです。
株式会社フチオカ 福祉用具専門相談員 高木正史 氏
川瀬敦士 先ほど事例にあがった、膝折れするのは、やはりお風呂に入る怖さがもしかしたら動線の中にあるのかもしれませんね。
高木正史(フチ・福) 入浴の事例で私が関わることは、入り方が分からない、怖いという部分なのかなあと思います。
川瀬敦士(川瀬・リハ) 在宅で手すりとか移乗ボードとか、いろいろと入れたりすると思いますが、施設なんかでも手すりを付けたりとか、何か福祉用具を入れたりすることはあるのですか?
高木正史(フチ・福) はい、相談していただいて購入していただく事があります。
川瀬敦士 「ここをもうちょっと考えてやった方がいいな」とか、いろいろな施設やお家を周っている中で(入浴の)環境の部分で何か感じることはありますか?
高木正史 通いのサービスでは、スタッフさん自体が介護する技術を持っていられるので、そこがやっぱりご自宅での場と、サービス提供の場とで一番大きな違いだと思います。ご自宅で福祉用具や住宅改修等で環境を整えて、それによってお一人でスムーズに入浴できるようになったと喜んでいられるお客様もおられますし、また多少なりとも介助を必要としながらも事がスムーズに行くようになったという方もいます。反対に環境を整えてみたものの、思うようにいかなかったというお客様もいました。それは家族に介護する技術がないこともありますし、夫婦の場合など男女の体力の違いもあってスムーズにいかないこともあります。
川瀬敦士 お風呂関係でよく出る福祉用具は上位3つくらいまでどんなものがありますか?
高木正史 一番目はやはりシャワー椅子です。お風呂用の椅子で市販のお風呂用の椅子ですと、大体高さが20cmくらいですが、これはその方の体格に合わせて座面の高さが調節できます。なので浴室での立ち座りがスムーズにできます。昔に比べていろんな商品があります。
川瀬裕士(川瀬・医師) 椅子に肘があったりとか?
高木正史 昔は、座面は単なる樹脂製のものだけでしたが、今では少しでも座った時に当たりが柔らかいように柔らかいパット付きのものや、肘掛けがついているもの、使っていない時に折りたたんで邪魔にならないものなど、種類は豊富になりました。2番目によく出ているのが、浴槽の縁にはめて締め付けるだけの浴槽用の手すりです。3番目はお風呂の中に入れる浴槽台です。意外と在宅で少ないのはバスボード*3です。中には壁に直接手すりを付ける方もいられます。
川瀬敦士 シャワー椅子 → 手すり → 浴槽台の順ですね。洗い場に敷くようなすべり止めマットとかは?
高木正史 そうですね、洗い場より浴槽内に敷くマットの注文はあります。お風呂の中が滑りますので。浴槽用すべり止めマットです。循環設備のある施設ではきれいなお湯が保たれますが、自宅ではお湯が汚くなったりすると下の方がヌルヌルして滑ります。
川瀬裕士 バスタブの中に敷く物ですね。
高木正史 そうです。バスタブの中に敷くマットもありますし、洗い場に敷くマットもあります。
*3 バスボード: 浴槽の両縁に渡すボード。湯面の上部にあることで浴槽に入る時に一旦ボードに腰掛けてから湯に入ることができ、立った状態で浴槽の縁を跨がずに湯に入ることができる。
川瀬敦士(川瀬・リハ) デイサービスで入浴の介助をしている際に、先ほどの事例でお風呂に入ること自体嫌だという方もいましたが、浴室内の移動であるとか、そういうことで怖さがあって、足が出にくくなるとか、そのような方はいますか?
丸山麻子(デイサ・介) います。脱衣場から洗い場、浴槽までが広いのでそこを濡れた足で行くのに問題があります。浴槽の周辺に手すりはありますが、活用が出来ていない状況です。スタッフが終始、両手で介助しています。またシャワー椅子がそんなに新しいタイプではないので、背もたれはありますが肘掛けがありません。次から次へと皆さんが来られるので、ある一定の高さでしか対応できませんので、男性の方と小柄な女性の方では立ち座りも全然違うのかなぁと思います。またお尻の座面を一度暖かくして座ってもらいますが、「冷たい」と怒られる方もいます。人それぞれ好みが違いますので、熱いという方もいれば冷たいという方もいます。
川瀬敦士 座面が暖かいものはありませんよね。
高木正史(フチ・福) そうですね。ただ座面が樹脂だけのものよりはパットが付いているものの方がまだヒンヤリ感は少ないと思います。またお尻の肉が落ちてくると、当然普通の樹脂だけだと座っていて痛いと感じますが、柔らかいパット付きのものは座っていてお尻に優しいです。
川瀬敦士 そのような刺激が、認知症の人にとって嫌な記憶になって拒否している方もいるのかもしれませんね。椅子なんかも見直しが必要な場合もあるのかもしれません。
看護師、“先生”、信頼関係
川瀬敦士 次の例です。坂井さんお願いします。
坂井美和子(川瀬・看) 介護スタッフの入浴の勧めに「風呂なんか絶対に嫌ら!」と言って拒否されている方に、職業を利用して看護師が「〇〇さん、背中に赤いものができているみたいなので、ここだと皆がいるので、ちょっとお風呂場に移動しましょう」と誘導して、何気なく脱がせて、介護スタッフに引き継いでお風呂に入っていただいた事例です。怒ったりもせず、脱いだらお風呂に入るモードになってそのまま入りました。職業を活かして。
川瀬神経内科クリニック 看護師 坂井美和子 氏
川瀬裕士(川瀬・医師) 看護師の服装だからということもあるのでしょうか?
坂井美和子 そうです。
川瀬敦士 難波さんそういうことはありますか?
難波京子(訪看A・看) 私たちはジャージなのであまりそういう事例はありませんが、お風呂が大好きな方がある日拒否されて、どうしたのかなぁと思いながらも、「嫌だ」と言うので、時間をずらして改めて声掛けしたら入っていただいてきました。後で話を聞くと、息子さんが介護をされていますが、失禁があって怒られたようで、気持ちが辛かったようで、(その時は)嫌だったようでした。お風呂だけの問題ではなくその時々の気分もあるのだと思いました。人間関係が上手く保てれば服装や職種は関係ないと思います。
川瀬敦士(川瀬・リハ) 星野さんどうですか?
星野久美子(訪看B・看) 私は経験がありませんが、他のスタッフで、「明日受診だから体をきれいにして先生に診てもらおう」と言ってお風呂に誘ったということがありました。
川瀬敦士 医療と絡めることですね。
星野久美子 “先生”という言葉を出すと、案外すんなり行く時もあると思います。
川瀬敦士 轡田さんいかがですか?
轡田由紀(訪入・看) デイサービスと訪問入浴をやっていましたが、今までなじみの方が一緒にいて、その人と入っていましたが、その片方の方が来られなくなって、相方がいなくなってしまって、脱衣場まで行きましたが、「私気分が乗らなくて入りたくない」と言って、混乱しているような状態だったので、その時は無理に入浴を勧めず「今日はやめましょう。また今度にしましょう」と声掛けをしました。
川瀬敦士 普段は親しい人と一緒に入っているということを分かっていたからこそ、信頼関係の中でその様な対応をしたのですね。看護師だから使えるテクニックもあると思いますが、介護であってもお薬の事と医療の事とかで信頼関係があればそういうネタで誘う事が出来るかもしれませんね。
皆と一緒に
川瀬敦士 次の事例です。芳雄さんお願いします。
高橋芳雄(川瀬・介) 非常に怒りっぽい方で、ご家族としては入浴してほしい希望のある方です。何とか説得、お誘いして脱衣場までは来ていただけるのですが、服を脱いでいただく段階で怒り出します。「自分だけがなぜ服を脱がなければいけないんだ」という本人の気持ちがあるようでした。「なぜ、服を脱がないといけないのか?」と言って、なかなか理解が出来ない方でした。そこで入浴好きの方と一緒に入浴にお誘いして、その方が服を脱いでいるのを横目で見ながら、服を脱ぐように誘導するとすんなり脱いでくれました。プライバシーも重要ですが発想の転換でうまくいった事例でした。
川瀬敦士 デイサービスに行って(皆が入るのを見て)入るようになった人もいましたね。皆が入っているのに私だけ拒否するのはどうかという気持ちがあり、すんなり入った方もいました。
ぴったりの服、ゆったりの服
川瀬敦士 次の事例も芳雄さんですね。
高橋芳雄 非常に(認知症が)重度でこちらの声掛けに対してもほとんど理解していただけず、その瞬間の記憶しかない方です。最初に「お風呂に入りましょう」と声掛けして脱衣場に行っても、服を脱がすお手伝いをすると怒られてしまします。また、その方は(体に密着する)ぴったりとした服を着ていましたので、ご家族に相談しまして、ゆったりとした服装にしていただきました。介助もしやすくなりましたので、そこで手間取ることもなくなり、すんなりと入浴することが出来ました。ただ、ご家族(奥様)にゆったりとした服装にしてもらうように説得することが大変でした。
音楽
川瀬敦士(川瀬・リハ) 脱衣場から周囲にもれるように大き目の音でBGM(歌謡曲、童謡)をかけてうまくいった例もあったようです。デイサービスでは音楽をかけていますか?
丸山麻子(デイサ・介)昔はよく皆さんの好まれる歌を浴室だけで聞けるように流して、皆さん歌っていましたが、最近はラジオとかくらいでしか流していません。(音楽は)流さなくなりました。
川瀬敦士 かえるハウスはどうですか?
原島哲志(川瀬・介) かえるハウスは完全個浴なので今のところ曲をかけることはないです。
川瀬敦士 デイケア樫の森ではどうですか?高橋さん
高橋芳雄(川瀬・介) 関われるスタッフが多い時にはBGMをかけています。ただ、少ないスタッフで入浴を行う時には、音はリスクを避けるための重要な情報でもあるので、あまり音楽はかけません。どうしても歌で誘いたいときは私が歌います。
川瀬敦士 訪問入浴では、音楽はかけますか?
坂井覚子(訪) 無いですね。
川瀬敦士 あまり音楽は使わないのでしょうかね。逆に、たまにやってみて効果があるのかもしれませんね。
その他の成功例
・出来るだけ相手を褒めて気持ちの良い状態にした ・利用者さんとスタッフの相性が合わないだけかもしれないのでスタッフを変えた ・初回は無理せず足場等で場に慣らした ・脱衣に拒否のある方はバスタオル等で即席個室を作った ・裸になってからも体にタオルを巻き浴室内まで移動した ・ぬる湯、熱湯好きの方にはとことん意向に添った ・頓服薬を服薬後、落ち着かれてから入浴を始めた |
まとめ
川瀬敦士(川瀬・リハ) まとめに入ります。入浴時の問題ということで始まりましたが、今までの皆さんのお話を聞くと、やはり入りたくない人にどう対応するかが一番切実で苦労されていると思いました。
入浴時の問題に役立つ実践介護テクニック |
築き上げた信頼関係が最も大事であることは言うまでもないが、認知症の方は毎回忘れてしまうこともあるので、そのことも考慮して随時適切な対応が必要 |
①嫌な原因 ・風呂場での移動に対する恐怖心(福祉用具の活用) ・下着の汚れなどの羞恥心(見て見ぬふり) ・更衣の煩わしさ(脱ぎやすい服) |
②入りたい気分にさせる ・入浴剤、音楽 ・きれいにしましょう(外出するから、先生の診察があるから) ・人と一緒に |
③それでもダメなら ・タイミングをずらす ・他のスタッフが誘う ・みんなで説得 ・背中を見せて ・無理強いしないで次回に ・何度もチャレンジ |
感想
原知子(居宅・CM) いろんな職種の方からお話を聞けて本当にためになりました。私
も4月になる前まで特別養護老人ホームで介護職をしていましたので、今まで話した
内容についていろいろとやっていました。ケアマネージャーの仕事や何をするにもやはり、相手との信頼関係が一番大事だと改めて思いました。今日はいろいろな事を聞かせていただきありがとうございました。
難波京子(訪看A・看) いろんな方がいらっしゃって、やはり自分達だけで考えるのではなく、いろんな方の視点から見ていくことは大事だなと思いました。「なぜ」と考えた時にいろんな職種の考え方、視点がありますのでそうした方々の意見も聞くことは大事だと思いました。今日はありがとうございました。
高橋芳雄(川瀬・介) ありがとうございました。なかなか自分からは出てこない視点等を聞かせていただいて勉強になりました。また今日の内容はうちのスタッフにも伝えたいと思います。また我々が悩むということはご家族も我々以上に悩まれていると思うので担当者会議や送迎の際に伝えていきたいと思います。
坂井美和子(川瀬・看) 今日はありがとうございました。なぜその人がそうなるのかを考えてあげて、やはり安心出来る環境が一番大切な事ではないかと思いますので、どの部分の関わりにおいてもその点は大切な事だと思いました。
布施良友(川瀬・介) 普段、入浴の業務とは関係していませんが、今日はいろんな分野の方の入浴困難な事例を聞かせていただいて非常に勉強になりました。サービス担当者会議の中でご家族様から入浴が大変ですというお話を聞くことがありますが、認知症の方が上手く伝えられない部分、安心面やどうして嫌なのかの背景等をくみ取り、本人と家族の良い繋ぎが出来るのではと思いました。今日はありがとうございました。
川瀬神経内科クリニック 介護職 布施良友 氏
星野久美子(訪看B・看) ありがとうございました。実際、私が今訪問している先では、認知症の方はいませんが、実は家族の中に認知症で治療している者がいます。本当に入浴拒否でプライドも高く、家族の言うことは聞かない、という感じなのです。今日はいろんなヒントをいただきました。家族だと「もう本当に!!」と考えてしまいますが、違った面から見ていけるように、接していけるようにしたいと思いました。
坂井覚子(訪入・介) 今日は初めてこのような場に参加させていただいて、いろんなサービスの方々から入浴拒否の事や解決方法を学べて本当に良かったです。また機会がありましたら参加させていただきたいと思います。ありがとうございました。
轡田由紀(訪入・看) いろんな職業の方の意見を聞けましたし、実際に入浴拒否の方もいましたので、明日からのサービスに生かしていきたいと思います。ありがとうございました。
長谷川綾子(デイサ・介) どうしてもデイサービスでは午前中しかお風呂をやっていない事情があって、ちょっと流れ作業になりがちなところもありますが、初心に帰って、いろんなお話を聞けてまた信頼関係を築きながらちょっと試してみたいと思うことがいろいろあったので勉強になりました。ありがとうございました。
高木正史(フチ・福) ありがとうございました。はじめて今回参加させてもらいましたけれども、思っていた以上に気軽で楽しく参加させていただくことが出来ました。私の立場では普段、聞いたり関わったりしたことが無いような実例を聞くことができて、介護現場での問題の奥深さを改めて痛感した部分があります。今後、入浴拒否されている方がスムーズに入っていただけるようになれば幸いな事だと思いますし、その中で安全な入浴のための用具が必要になった時にはご相談いただければお力になれるように努めていきたいと思いますので、今後とも宜しくお願い致します。
原島哲志(川瀬・介) ありがとうございました。入浴はかなりデリケート部分もありますので「自分だったらどうか?」を常に考えていく必要があるのかと思います。覚えていない場合もありますので、初対面の人に「お風呂に入りましょう」と言われてもどうかと思いますので、やはり信頼関係を重視していきたいと思います。
加藤君代(川瀬・介) ありがとうございました。今日初めて参加させていただきました。私はここで毎日同じ人達と生活していますので、新しい事例というのはその方の認知度が進んでいく過程で変化はありますが、今日のようなお話は初めて聞かせていただきましたので、非常に良かったです。今後は今いる入居者さんの認知度が進み、今まで出来たことが出来なくなった時、気持ちの良い入浴が出来るように今日学んだことを活かしていければと思いました。
渡辺美佳子(川瀬・CM) ありがとうございました。私はケアマネージャーの立場でご家族やご本人の状態でケアプランに入浴を位置付けますが、その先のそれぞれのサービス事業者さんがこんなにも工夫をして下さって、個々のその方の意向などを本当によく考えて対応しているのだと改めて感じました。私もお願いする時にその方の好みや嫌いな事をご家族の方から聞ける情報があればきちんと伝えていかなければいけないと、改めてアセスメントの大切さを感じることが出来ました。今日はすごく勉強になりましたので、今後に活かしていきたいと思います。ありがとうございました。
羽賀美里(訪入・介) ありがとうございました。入浴に関しては嫌いという方もいますので、入浴はあまり好きではないけれども、毎週私たちに会えることが楽しいから頑張るというような感じの方もいると思いますので、今日勉強した声掛けなどを率先してやっていけたらいいなと思って、明日からまた頑張りたいと思いました。
丸山麻子(デイサ・介) 初めてこの研修会に参加させていただきとても勉強になりました。今日は「入浴時の問題にどう対応するか」というテーマだったのですが、仕事をしていて毎日入浴介助があって、毎日悩む訳ではありませんが、入浴拒否のある方が来られた時はどうやって入れようかと、すごく考えたりしていたので、お誘いする時の声掛けとか、脱衣時の対応とか、福祉用具のシャワー椅子の検討など、考えていけたらいいなと思っています。ありがとうございました。
川瀬康裕(川瀬・医師) 皆様お疲れ様でした。毎回どのテーマでも思いますが、色々な職種の人が集まって、色々な視点で気軽に話し合うことがとても重要で、今回もそれができたのではないかと思います。とても日々の診療の参考になりました。ありがとうございました。
川瀬神経内科クリニック 医師 川瀬康裕 氏
川瀬敦士(川瀬・リハ) 以上で第6回認知症研修会「認魂」は終了となります。ありがとうございました。